次亜塩素酸水は効くのか? 業界側「有効」、国「確認できず」

2020年6月13日 14時33分

保健関係施設で使われる次亜塩素酸水の噴霧器。コロナ禍で普及したが…=石川県川北町で

 新型コロナウイルスの感染防止策で、品薄だったアルコール系消毒剤の代わりの消毒剤として注目されてきた「次亜塩素酸水」。だが、五月二十九日に経済産業省所管の独立行政法人は「現時点で有効性は確認されていない」と発表し、医療関係者からも疑問視する声が上がる。これに対して業界側団体は記者会見して「有効で安全だ」などと猛反発している。 (稲垣太郎)
 「次亜塩素酸水溶液は効かない、あるいは噴霧すると毒性があるという誹謗(ひぼう)中傷の報道が流れている」。十一日に東京・丸の内で開かれた「次亜塩素酸水溶液普及促進会議」の記者会見。越智文雄代表は冒頭、そう訴えた。
 越智代表は札幌市にある危機管理コンサルタント会社の社長。三重大大学院の福崎智司教授(洗浄・殺菌工学)、北海道大の玉城英彦名誉教授(公衆衛生学)、東京工大の奈良林直特任教授(原子炉工学)の三研究者と次亜塩素酸水メーカーの社長ら計約十人で、四月下旬に同会議を発足させたという。
 会見を開いたのは、経産省所管の独立行政法人「製品評価技術基盤機構」の代替消毒方法に関する検討委員会が五月二十九日、「次亜塩素酸水の新型コロナへの有効性は確認されていない」と発表したことに反論するためだ。
 会見では研究者らが、次亜塩素酸水の空間噴霧の安全性や新型コロナへの有効性などに関する実験結果などを示し、次亜塩素酸水が感染予防策として役立ち、人体に影響なく安心して使える液体であるなど九項目をアピールした。越智代表は、この中間報告を受けた一部の報道が「偏向」し、文科省が学校で子どもがいる前では噴霧しないよう求める通知を出したことも問題視している。
 とはいえ、このコロナ禍で、アルコール系消毒剤の代わりに次亜塩素酸水はかなり普及しており、その有効性・安全性を確認できないというなら、それは報じられて当然だ。
 中間報告は、「消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況でも推奨されない」(世界保健機関)などと、各国の公衆衛生専門当局は消毒剤噴霧に否定的なのに、国内では多くの事業者が「加湿器に入れて噴霧することで空間除菌できる」とうたっていると指摘。さらに、市販品の中に製法や原料、濃度や成分など必要な情報が明記されていないものがあるとしている。
 感染症対策コンサルタントの堀成美氏は「新型コロナ感染の危険性が最も高い病院でさえ、次亜塩素酸水を含むあらゆる消毒液の噴霧などしていないのに」とこの騒動にあきれた様子だ。「新型コロナが存在しない家庭や職場、飲食店などで次亜塩素酸水を噴霧する必要などないし、そもそも新型コロナは飛沫か接触で感染するもので、空気感染しない」と説明する。
 医療ジャーナリストの油井香代子氏は「院長らが個人で判断できるクリニックなど小さな医療機関では次亜塩素酸水を消毒などに使う所があるが、公立など大きな病院は次亜塩素酸水を使っていない。有効性や安全性のエビデンス(科学的根拠)がないからだ」と指摘。「同会議が有効性があるとする一つの実験データだけではエビデンスにならず、省庁や公的機関が『お墨付き』を出すわけにはいかない。いくつものデータが積み重ねられなくてはならない」と話す。
 有効性が不確かな情報に振り回されないためにはどうすればいいのか。油井氏は「省庁や公的な病院など信頼できる機関が明らかにしているものを読み、基本的な知識を身に付けることが必要だ」と話した。

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