「中学校の制服選ぶ自由を」トランスジェンダーの願い 高校生が署名活動

2020年6月13日 14時51分

署名を始めた高校生(手前)と地元の支援団体代表の七崎良輔さん=東京都江戸川区で

 「スカートの制服を毎日、血へどを吐く思いで着て学校に通いました」。自らの性を男性と認識する高校生(17)が、母校を含めた東京都江戸川区の全区立中学校の制服を選択制にするよう区に求める署名活動を、ネット上で始めた。学校には制服や名簿など男女を区別するものが根強く残っているといい、「不登校や、時に命にもかかわる問題だと知って、対応してほしい」と訴える。 (奥野斐)
 署名を始めたきっかけは、今月に入って新型コロナウイルスによる休校から学校が再開された後、区内の中学で男女別の分散登校が実施されたことだった。「自分のような子は苦痛だろうな」。中学時代、気持ちを押し殺して制服を着ていた日々を思い出し、五日に署名サイト「Change.org」で、「江戸川区の制服を選択制にしてください!」と掲げた。
 物心ついた時から「女の子じゃない」と感じていた。レースの付いた服を着せられたり、女の子扱いされたりするのが嫌で仕方なかった。中学生になり、毎日のスカートに加え、体操着も男女で柄が異なっていた。男子用を借りて着た時には、先生から「なんで女なのに男の体操着を着ているんだ。気持ち悪い。脱げ」と言われ、週一、二回しか登校できなくなった。
 「気遣ってくれる大人はいなかった。むしろ、否定され続けてつらかった。自殺を考えたこともあった」
 一年の三学期ごろから、仕方なく少しずつ学校に通うようになった。三年の秋、修学旅行を前に「女の子と一緒に風呂に入れない」と学校側に伝えた。風呂は個室にしてもらえたが、先生は「あと半年だから我慢しなさい」と女子扱いのままだった。
 文部科学省によると、制服は教育委員会や学校長の判断に委ねられている。同省は二〇一五年に、性同一性障害など性的少数者の児童生徒に対し、きめ細かな対応をするよう通知。例として「自認する性別の制服・衣服や、体操着の着用を認める」と示した。
 東京都世田谷区は昨年四月から、全ての区立中で制服を自由に選べるようにした。千葉県柏市で一八年春に開校した市立柏の葉中も、性別に関係なく選択できる。出生時の性別と異なる性を生きるトランスジェンダーに限らず、防犯や防寒面から制服の選択制を望む声もある。江戸川区によると、同区でも制服選択制について教育委員会で検討は始めているという。
 署名を始めた生徒は、制服がない定時制高校に進学した。地元の支援団体「LGBTコミュニティ江戸川」に関わり、同じ悩みを持つ子どもたちの存在や、死を選ぶ人もいると知った。「僕と同じように制服に苦しむ後輩たちを少しでも減らしたい。それぞれが着たいものを着る権利を尊重して」と願う。
 団体代表の七崎良輔さん(32)は「わがままではなく、制服をこれだけ苦痛に感じている子がいる。行政は先生たちへの啓発や研修をし、不要な男女分けをなくしてほしい」と話している。

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