国際人権問題に深入りしない安倍首相 渦中の大国に配慮

2020年6月14日 07時07分
 中国が反政府活動を禁止する「国家安全法」の香港への導入決定や、米国での黒人男性暴行死事件など国際的な人権問題を巡り、安倍晋三首相が存在感を示せていない。国際社会を主導すると決意を語る一方で深入りを避ける姿勢からは、トランプ米大統領や中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席を刺激したくない本音が透ける。他の外交課題でも打開のめどが見いだせず、手詰まりが続く。 (上野実輝彦)

■来日

 「現下の世界的課題を解決するためには、新たな国際秩序の構築に取り組む必要がある。わが国は民主主義や人権、法の支配といった普遍的な価値を堅持していく」
 首相は九日の衆院予算委員会で、人権を重視して新型コロナウイルス感染症収束後の国際社会をリードする考えを強調した。
 だが、行動が伴っているとは言い難い。中国が五月に、香港市民の権利を制限する「国家安全法」導入を決めた後、日本は中国に「深い憂慮」を示したものの、米国や英国など四カ国による対中非難声明には加わらなかった。背景には、延期された習氏の国賓来日実現に向けて関係悪化を避けたいとの事情がある。
 首相は「国家安全法」に関して先進七カ国(G7)で共同声明を取りまとめたい考えも示したが、実現は見通せない。「役割が大きいのはG7議長国の米国。日本がどうこう言えるものではない」(外務省幹部)。政府高官は「(欧州には)同調できない国もあるのではないか」と明かす。

■対照的

 米国での白人警察官による黒人男性暴行死事件では、存在感はなお薄い。
 人種差別反対の機運が国際的に高まり、日本でも抗議デモが行われた。それでも、首相は国会などで積極的に言及していない。菅義偉(すがよしひで)官房長官も記者会見で「人種差別対応は許されない」と語る際「一般論」だと前置きした。政府の姿勢には、抗議デモを強制排除したり警察組織を擁護したりする、トランプ氏の立場を損なわないようにとの配慮がにじむ。
 対照的に、主要国首脳は強いメッセージを発信している。ドイツのメルケル首相は、抗議デモに強硬なトランプ政権の対応を「政治手法が非常に物議を醸している」と批判。カナダのトルドー首相は自らデモに加わった。英国のジョンソン首相も人種差別を非難して対策強化を訴えている。

■停滞

 安倍首相が政治的遺産(レガシー)としたい外交課題は停滞が目立つ。北朝鮮による日本人拉致問題で、政府は水面下で北朝鮮側と接触を続けるものの、具体的な交渉に至っていない。首相は拉致被害者横田めぐみさんの父・滋さんの死去を受け「何としても安倍内閣で解決する決意だ」と語ったが、残された時間は少ない。
 北方領土問題はロシアの譲歩を引き出せないまま、平和条約締結交渉が難航。首相は一時検討していた六月下旬の訪ロを見送った。元徴用工への賠償問題も韓国との対立が深まったままだ。

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