コロナ対策で「海水浴場」のない夏 監視員不在で海が無法地帯化?

2020年6月14日 07時07分

◆神奈川 開設はせず

多くの人でにぎわう海岸=8日、神奈川県藤沢市で

 新型コロナウイルスへの感染対策で、今夏の海水浴場の開設を中止する首都圏の自治体が相次いでいる。昨年の台風被害からの復興を目指す千葉県南部では、経営難の観光業界からの要望を受け、海水浴場を開設する動きもある。一方、中止しても監視員がおらず、海や砂浜の安全確保がおろそかになる「無法地帯化」の懸念も出ている。
 神奈川県内に二十五ある海水浴場は今夏、一つも開設されない。しかし人気が高い海岸には多くの人が訪れると予想され、地元から安全面を心配する声が上がっている。
 昨夏は百三万人が訪れた藤沢市の片瀬西浜・鵠沼海水浴場。好天に恵まれた八日午後はサーフィンをする人や、日光浴をする人たちでにぎわっていた。砂浜にテントを立て、休んでいた同市の男性会社員(31)は「海水浴場がなくても海は楽しい。夏もまた来たい」と笑顔で話す。
 隣にある片瀬東浜海水浴場は昨夏、五十一万人が訪れた。運営する江の島海水浴場営業組合などによると、例年ならライフセーバーや海の家の従業員ら約百人で安全を見守るが、今夏は海水浴場を開設しないため、遊泳エリアから外れて水難事故に遭う人や屋内スペースがなく熱中症で倒れる人が出る可能性がある。
 県は七月をめどに、管理する海岸に「遊泳は控えてください」と書かれた看板を設置し、警備員を巡回させることを決めた。しかし、ライフセーバーの配置や救護所の設置は未定。
 臼田征弘組合長(75)は「看板があっても海に来たらみんな泳ぐはず。事故が多発しないか心配。何十年もかけて海の安全やマナーを守ってきたが、今年は自分たちで守れず、無法地帯になるのでは」と危機感をにじませる。 (丸山耀平)

◆千葉 一部開設も

海水浴場の開設中止が決まった一宮海岸。家族連れやサーフィン客の姿が目立つ=10日、千葉県一宮町で

 「外房の海岸は首都圏で期待されている。地元の理解を得て開設したい」。千葉県勝浦市の土屋元(はじめ)市長は四日、記者会見で強調した。
 九十九里浜や房総半島、稲毛海岸など県内約六十カ所の海水浴場には毎年百万人近くが訪れる。多くが海開きを中止する中、開設する方針を表明しているのが勝浦市と鴨川市だ。
 背景には、昨年秋の台風や大雨、今年の新型コロナによる観光客数の大幅な減少がある。観光業界にとって、今夏の海水浴場開設は死活問題だからだ。
 南房総市も四日、石井裕市長が「地元の観光事業者は困窮している。経済状況を踏まえて判断した」と、規模を縮小した上で「一部開設」を検討していることを明らかにした。
 しかし「開設したら想定外の混乱が起きる可能性がある」との懸念の声が上がり、中止も含めて再検討することに。市の担当者は「二十五日までには結論を出す」としている。
 方針が決まらず不安を覚える業者も。同市内で民宿を営む鈴木淳さん(51)は、宿泊者を満員にせず、客同士の接触をなるべく少なくするなど感染対策をした上で海水浴場の開設を期待する。「夏に泳ぎに来る人がいないと、経営的に厳しい」と表情を曇らせる。
 逆に開設した場合は、安全確保に課題が残る。ライフセーバーは夏休みの短縮で学生の参加者が限られる上、救助活動での接触を懸念するケースもあるという。
 中止した場合も人の出入りは避けられず、事故防止策が悩みの種だ。九十九里浜を抱える山武市の担当者は「職員や警備員の配置を考えている」と話す。 (山田雄一郎、太田理英子)

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