「地上イージス」の配備計画を停止 技術的な問題 防衛相が表明
2020年6月16日 07時10分
河野太郎防衛相は十五日、地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」を秋田、山口両県に配備する計画を停止すると表明した。ミサイルの発射後、「ブースター」と呼ばれる初期加速装置を山口県の自衛隊演習場内に確実に落下させることができない技術的な問題が判明し、改善にさらなる費用と期間が必要になると説明した。近く国家安全保障会議(NSC)に報告し、配備計画の在り方を議論する方針を示した。計画は事実上の撤回となる見通しだ。(妹尾聡太)
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河野氏は技術的な問題に関し「米側と協議をしてきたが、ソフトウエアの改修だけでは確実に落下させるということが言えない。ハードウエアの改修が必要になる」と記者団に説明。開発にさらに十年以上、数千億円の費用が想定され、計画の続行は「コスト、期間を考えれば合理的ではない」と述べた。
防衛省はこれまで、配備候補地の陸上自衛隊むつみ演習場(山口県)内に、ブースターを確実に落下させると説明してきた。
河野氏は十五日に山口、秋田両県の知事に計画停止を電話で伝えたと明らかにした。安倍晋三首相には十二日に方針を説明し、了解を得たという。来年度予算の概算要求に関連費を盛らず、当面は海上自衛隊が既に配備しているイージス艦でミサイル防衛(MD)を続ける方針も示した。
イージス・アショアの導入は二〇一七年十二月、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威を理由に閣議決定した。二基で日本全域をカバーするとして、秋田、山口両県の陸上自衛隊演習場に一基ずつ配備する計画を進めてきた。
調査費などこれまでの配備計画関連費は千七百八十七億円を計上していた。米国から二基取得する費用や維持・運用費、施設整備費に五千億円以上を要するとみられたほか、海自がイージス艦を配備していることから、費用に見合う安全保障上の効果があるかどうかが疑問視されていた。
防衛省は一九年、誤ったデータを基に陸自新屋演習場(秋田市)を「適地」と選定。担当者が住民説明会で居眠りをする不祥事もあり、新屋演習場への配備を断念して別の候補地を再調査していた。配備は二五年度以降を予定していた。
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