自民、苦渋の自主投票 小池氏とのねじれ抱えた自民都議会<かすむ政党 都知事選2020上>

2020年6月16日 06時58分
 現職の小池百合子氏が十二日、東京都庁で出馬表明をした六時間前。東京・永田町の自民党本部八階で、都知事選の候補者を決める最後の党都連の「選考委員会」があった。会議はわずか三十分で終了。部屋を出てきた鴨下一郎会長は淡々と語った。「独自候補の擁立には至らなかった。選考委員会の役割は終えた」
 一六年都知事選、一七年都議選で小池氏に「都連はブラックボックス」などと批判され、相次いで敗れた自民。都知事選は、ようやく回ってきた「起死回生のチャンス」のはずだった。
 一九年六月、都連は選考委員会を設立。都議らを中心に「小池氏は信用できない」と批判を繰り返し、独自候補の擁立を目指した。
 対する小池氏は、したたかだった。
 一六年、予算に都議会各会派の要望を反映させる「政党復活予算」の廃止を表明。自らは各業界団体へのヒアリングを続け、自民の影響力を奪った。
 さらに党本部への接近。旧新進党などで行動を共にした二階俊博幹事長をたびたび訪れ、蜜月ぶりをアピールした。「小池氏に勝てる候補がいるなら早く連れてくればいい」。昨年十月、この言葉が二階氏の発言として伝えられると、都議の一人は声を震わせた。「こんなふうに言われたら誰も出られないじゃないか」
 次第に小池氏支援が支配的になる。関係者によると、昨年末の時点ではほぼ独自候補擁立断念で固まっていたという。それでも築地市場の豊洲移転問題などで対立してきた一部の都議らは「筋が通らない」と抵抗。五月二十八日の選考委では「出てもいいという人間はいる」と、若手都議の擁立もにおわせたが、状況は変わらなかった。
 小池氏の出馬表明が取り沙汰された十日、都議会自民党は、真偽が疑問視されてきた小池氏の「カイロ大卒業」についてただす決議案を出そうとした。ところが本会議直前に撤回。関係者は「党本部から強く止められた」と証言した。
 小池氏が擦り寄ったのか、自民党が引き込もうとしたのか。結局、小池氏は党推薦を求めなかった。はしごを外された形の党の決定は中途半端な「自主投票」。十五日、鴨下会長は都内党支部長らを集めた会議で「誰を支援したらいいんだ」と問われ、「忖度(そんたく)してほしい」と回答。小池氏支援を鮮明にする二階幹事長を意識した発言だった。
 抱き込むこともできず、対立もしない。都議の一人が吐き捨てるように言った。「情けない。また小池知事にしてやられた」
 一方、小池都政で事実上の与党として存在感を高める公明党は実質的に小池氏を支援する方針。党関係者は冷ややかに語る。「小池氏は、二つに割れている自民が有権者に分かりにくいと考えて推薦申請をやめたのでは。小池氏とねじれているのは都議会の自民だけだ」 (岡本太、小倉貞俊)
 ◇ 
 東京都知事選の告示を三日後に控えた十五日、選挙戦の主な構図が固まった。だが主要政党はいずれも自前で候補を立てられず、首都決戦としては異例の党派色が薄い展開となった。思惑や背景を追った。

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