「けちがつき過ぎた」地上イージス 安全面、高コストで断念

2020年6月16日 07時00分

米ハワイ州カウアイ島にある地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の米軍実験施設=2019年1月(共同)

 地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画が、事実上撤回される見通しとなった。防衛省は秋田、山口両県に配備して日本全土を弾道ミサイルから防衛すると説明してきたが、地元では安全性への理解が得られず、北朝鮮のミサイル開発が進み有効性にも疑問符が付いていた。ギリシャ神話の「あらゆる邪悪を払う盾」の名前に由来する最新兵器は、八方ふさがりが続いていた。 (山口哲人)

■不適

 「けちがつき過ぎた」。河野太郎防衛相の記者会見を聞いた自民党閣僚経験者は、地上イージス計画をそう振り返った。
 最も「けち」がついたのは、防衛省への信頼や兵器の安全性だ。防衛省は当初、秋田市の陸上自衛隊新屋(あらや)演習場と山口県萩市などの陸自むつみ演習場を地上イージス配備の適地とした。
 地上イージスは弾道ミサイルを探知するために強力レーダーを照射する。「適地」とされた周辺の住民からは、健康への影響を心配する声が根強かった。
 その後「不適」とした秋田県内の他の場所の調査方法の不適切さが判明。経緯を説明する説明会で防衛省職員が居眠りして住民の怒りを買い、反対の動きが勢いを増した。
 防衛省は候補地選定の調査を三月末に終えるとしてきたが、候補地は絞れず、新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に期限を四月、五月、七月へとたびたび延期してきた。

■追加

 河野氏は十五日の記者会見で、むつみ演習場で地上イージスを発射した場合、その一部であるブースターが敷地外に落ちる恐れがあることを明らかにした。米国側と協議を重ねたが、改良に長い期間と数千億円の追加費用がかかる。
 地上イージス本体は二基で約二千五百億円。これに加えて維持管理などに要する経費は三十年で約四千五百億円に上る。予算は無尽蔵ではない。地上イージス関連の経費増大は他の防衛予算圧迫を意味し、内部からも導入に疑問視する声が上がっていた。今後は米国に対する違約金が発生する可能性がある。

■低高度

 有効性にも懐疑的な意見が出ていた。北朝鮮のミサイル性能が上がっているとみられるためだ。
 地上イージスは低い高度のミサイルは探知が難しい。これに対し、北朝鮮はロシア製の高性能弾道ミサイル「イスカンデル」に似たミサイルの開発を進めている。レーダーに探知されにくい低高度を飛び、着弾の直前で上昇する軌道を描く。
 自衛隊関係者は「ロケット砲のように横に飛ぶ軌道だと、レーダーの斜角に入らず探知できない」と明かす。政府高官は「今は迎撃ミサイルを撃たなければいけない状況ではない」と話すが、北朝鮮は日本政府との正式な対話に応じておらず、危機は常にある。
 河野氏は今後の対応について「ミサイル防衛は当面、イージス艦で対応する。その後は、まず国家安全保障会議をへた上で検討する」と話すにとどめた。

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