高尾山に三密の道 仏の教え、コロナ下の生活に生かせる
2020年6月16日 07時03分
五月二十五日に緊急事態宣言が全面解除されて以降、行楽地に人出が戻りつつある。都内屈指の観光名所、高尾山(八王子市)はどうなっているのか、密集を気にしながらケーブルカーで山頂に向かった。中腹の高尾山駅から歩くこと約十分。ふと、「三密の道」と記された門が目に入った。登山客で密集? 屋外なのに密閉空間? おそるおそる門をくぐり抜けてみた。
「三密の道」入り口に立つ門は「苦」の文字を意匠し、「苦抜け門」との言葉も記してあった。その先には石段が続いている。脇道に入ろうとする観光客は少ないためか人の密集はなく、当然、密閉空間でもない。深緑に囲まれながら、階段を上っていくうちに、心身共に健康になっていく気さえしてくる。「三密の道」の石段は五十四段。その先には、釈迦(しゃか)の遺骨を納めているとされる仏舎利塔がそびえていた。
「『三密』は、真言宗の教えにある言葉です」。高尾山薬王院の法務部長、堀江承豊さん(61)が解説してくれた。「三つの密」とは、真言宗(密教)では「身密(しんみつ)」「口密(くみつ)」「意密(いみつ)」のことで、それぞれ正しい行い(身)、正しい言葉(口)、正しい心(意)を心掛けるための修行を指すのだという。
二〇〇七年にミシュランの三つ星に認定されるなど、国内外に観光地としての知名度が高まった高尾山。本来の修行の山としての姿も知ってもらいたいと、薬王院が二〇一四年に整備したのが「三密の道」の真相だった。
ネット上では「集近閉(しゅう・きん・ぺい)」という言葉も広まりつつあるが、新型コロナウイルス感染対策の主流のキーワードは仏教とは関係のない「三密」。「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で会話や発声をする密接場面」を意味する。集団感染が起こった場所を調べた際に、この三つの「密」が共通となっていたことから、安倍晋三首相や都道府県知事らが強調するようになった。今では、新聞やテレビなどで目にしない日はない。
堀江さんは「宗教的な意味と異なる『三密』が広まってしまった」と苦笑しながら、「本来の教えを今の生活に生かすこともできる」とも語る。「感染する恐れがある行為は行わない」(身密)「感染者や医療従事者らへの誹謗(ひぼう)中傷を行わない」(口密)「周囲の人にいたわりの心を持つ」(意密)−。気持ちがすさみがちな今だからこそ、「三密を意識することが大切なのではないでしょうか」と訴える。
ネット上では「集近閉(しゅう・きん・ぺい)」という言葉も広まりつつあるが、新型コロナウイルス感染対策の主流のキーワードは仏教とは関係のない「三密」。「換気の悪い密閉空間」「多数が集まる密集場所」「間近で会話や発声をする密接場面」を意味する。集団感染が起こった場所を調べた際に、この三つの「密」が共通となっていたことから、安倍晋三首相や都道府県知事らが強調するようになった。今では、新聞やテレビなどで目にしない日はない。
堀江さんは「宗教的な意味と異なる『三密』が広まってしまった」と苦笑しながら、「本来の教えを今の生活に生かすこともできる」とも語る。「感染する恐れがある行為は行わない」(身密)「感染者や医療従事者らへの誹謗(ひぼう)中傷を行わない」(口密)「周囲の人にいたわりの心を持つ」(意密)−。気持ちがすさみがちな今だからこそ、「三密を意識することが大切なのではないでしょうか」と訴える。
自粛生活でたまったストレスを解消しようと、高尾山を訪れる観光客も少しずつ戻り始めている。ひたすら山頂を目指すのもいいが、普段の行いを振り返り、コロナ禍を乗り越えるための行動を考えるには、豊かな緑に囲まれた「密」とは無縁の「三密の道」は最適な場かもしれない。「密閉」「密集」「密接」を避けながら、新しい生活様式を思い描いてみるのはいかがだろうか。
◇本来は仏教の言葉
身「密」 -正しい行い
口「密」 -正しい言葉
意「密」 -正しい心
◇おなじみ「3密」
「密」閉
「密」集
「密」接
文と写真・布施谷航
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