「福祉崩壊」懸念の声 「感染者出た」中傷、うわさ 全国の施設で被害相次ぐ

2020年6月16日 07時18分
 新型コロナウイルス感染者が出た福祉施設や職員に対する中傷や、「感染者が出た」とのうわさで利用者が急減するなどの風評被害が全国で相次いだことが、全国社会福祉法人経営青年会(梅野高明会長)の調査で分かった。感染の第二波も予想される中で、同会は「中傷や風評被害で業務が滞り、必要な人にサービスを届けられず福祉崩壊になりかねない」と懸念している。 (五十住和樹)

 同会には、社会福祉法人の若手理事長や、高齢者、障害者、児童などの福祉施設施設長ら約千五百人が加入。調査は全都道府県の青年会代表者らを対象に五月上旬に行われた。千葉、茨城、長野、愛知など十府県で中傷や風評被害が確認されたという。
 調査結果によると、深刻な事例が目立つ。
 「何をやっているんだ」「地域をめちゃくちゃにされた」「感染者はどこの病院に行ったのか」−。クラスター(感染者集団)が発生した高齢者施設には、こうした中傷電話が殺到。職員らが対応に追われた。
 別の高齢者施設では、クラスターが起きたため、ごみ収集や給食の委託業者が業務を中止。職員の多くが濃厚接触者となり自宅待機する中で、通常の五分の一に減った残りの職員が、通常の介護に加え、新たなごみ回収業者の手配や給食の確保に奔走した。
 ある介護事業所では、濃厚接触者とされた職員が検査で陰性だったのに、「感染者が出たらしい」と事実無根の話が口コミで地域に広まり、利用者が激減したという。
 感染者が出た地域の特別養護老人ホームや保育所には、「施設を開けていいのか」「感染が飛び火しているのではないか」と問い合わせが殺到した。高齢者施設の職員が「感染リスクが高いから仕事を辞めろ」と家族に言われ、人手不足の中で施設長が懸命に説得して仕事を続けてもらった事例も報告された。
 このほかにも多くの中傷・風評被害が確認された=表。調査では、SNSなどインターネットによる中傷被害は確認されなかった。しかし調査以外の事例で、障害者施設が社会的責任から感染した職員の情報を公開したところ、ネットで感染者の身元を特定されるなど中傷があったという。
 調査の事務局を担当した金繁健太さん(28)は「いわれなき中傷や風評被害でサービス提供ができなくなり、その地域の障害者、高齢者などの生活を直撃する」と指摘する。クラスターが発生した広島県の福祉施設では、利用者や職員、その家族まで中傷の標的に。湯崎英彦知事が「感染者や医療関係者、その家族を誹謗(ひぼう)中傷、差別するのは絶対にやめてほしい」と何度も県民に訴える事態になった。
 全国老人福祉施設協議会(東京)は、風評被害対策などを施設側に指南する相談窓口を六月まで開設している。危機管理広報対応のコンサルタントが電話で対応するサービスで、情報の出し方なども含めてアドバイスする。同協議会は「第二波が来たときも窓口を設ける心積もりをしている」と話している。

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