ウミガメ、ジュゴンが帰ってきた タイの観光が目指す「コロナ後」

2020年6月16日 13時55分

国際線の原則乗り入れ禁止が続き、閑散とするバンコク・スワンナプーム空港の出発ロビー

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、タイ政府が「新たな観光の姿」を模索する動きを強めている。近年、観光業が国の経済をけん引してきたタイ。だが感染拡大の第二波が懸念される中では、多くの外国人観光客の受け入れには慎重にならざるを得ない。政府内では豊かな自然をアピールするなど、「量」から「質」への転換を目指す観光戦略づくりの検討も始まった。(バンコク・岩崎健太朗、写真も)
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◆「観光収入は半減」政府も下方修正


 ビーチリゾートが人気のタイ南部のプーケット島。地元の空港近くで中規模ホテルを経営し、中国人旅行者を対象にしたツアーを手掛けてきたスパシットさん(29)は「SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したときは、客足が遠のいても一年以内に回復したと聞いたが、今回はまだ何も見えない」と嘆いた。
 辛うじてホテルの営業は続けているが、今年は四月までの売り上げが前年同期の二割以下に激減。四十人いたスタッフには半額分の月給を渡し、大半を故郷に帰した。今後の需要の回復に期待しつつもスパシットさんは「安心・安全に楽しめる観光地でなければ誰も行こうと思わない。新たな工夫が必要になるだろう」と漏らした。
 タイには昨年、三千九百八十万人の外国人観光客が訪れ、観光関連の収入は約一・九三兆バーツ(約六兆五千億円)に達した。国内旅行も含めた観光関連収入は国内総生産(GDP)の二割近くを占めており、政府は今後十年でこの比率を三割程度にまで引き上げる目標を掲げた。
 だが、政府観光庁はその後、「外国人旅行者は年千六百万人にとどまり、観光収入は半減する」と見通しを大幅に下方修正。ユタサック長官は地元紙に「最善のシナリオでも、海外から旅行者が本格的に戻ってくるのは十月ごろになる」との見方を示した。

◆観光地の環境悪化から脱するチャンス


 コロナ禍でタイの観光業界では「百万人単位が失業に直面している」との試算もあり、経済界などには早期の外国人観光客の受け入れ再開を望む声が多い。だが多くの観光地でなじみの風景となっていた「密集」「密接」による感染第二波への懸念は根強く、政府は難しい判断を迫られている。こうした中、政府内では外国人の長期滞在者に対する健康証明書の提出義務や、感染対策に充てるための観光税の導入などの検討も始まった。
 コロナ禍で観光客の姿は消えたが、自然環境への負荷が減り、タイ国内では、これまで見られなかった砂浜でのウミガメの産卵や、群れで泳ぐジュゴンの姿が各地で報告されるようになっている。
 これを受けてユタサック氏は「観光地は過密し環境が悪化していた。かつての姿に戻ることを考えるのではなく、危機的状況から脱するチャンスと捉えるべきだ」と強調。今後は(1)持続可能な観光収益(2)一極集中を避けた分散型(3)デジタル機器などを駆使した安全管理―をキーワードに、新たな観光戦略づくりを急ぐ考えを示した。

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