改正バリアフリー法成立 「心の壁」取り除こう

2020年6月17日 08時15分

大阪市の小学校の校庭に設置されたスロープ(NPO法人ちゅうぶ提供)

 障害者や高齢者が自由に移動しやすい社会の実現を目指す「バリアフリー法」。二〇〇六年の施行以来、交通機関や建物などの設備面での対応は進んできた。だが、その運用や障害者らへの対応が不十分で、五月に成立した改正法では二年前の改正に続き、「心のバリアフリー」の推進などソフト面の強化を打ち出した。心のバリアフリーとは何か。改正のポイントと、障害のある「わけあり記者」が車いすでまちを散策したルポから考える。 (三浦耕喜、佐橋大)
 バリアフリー法はバスや電車、一定規模の建物、道路などを管理、運営する事業者にスロープやエレベーター、障害者トイレの設置、段差の解消などを義務づけている。このうち交通機関は、駅や空港など一日の利用者が三千人以上の旅客施設が対象。国土交通省によると、一八年度末で対象の九割で段差が解消し、点字ブロックが設置済みだ。
 ただ、設備や機能が十分に生かされない問題が起きている。例えば、タクシーでは、国の推奨で、車いすのまま乗車できるユニバーサルデザイン(UD)の導入が進むが、運転手が操作に不慣れで、障害者の乗車を拒否するケースが多発。また、照明が暗すぎて視覚障害者が歩きづらい駅があることも分かってきた。
 このため、今回の改正法では、車いすの人がバスや電車、タクシーなどを乗り降りする際に使うスロープの設置手順や、駅の明るさを十分確保させることなど、ソフト面の基準を国が新たに策定。事業者に守るよう義務付けた。
 ハード面だけでなく、ソフト面の対策は一八年の法改正で国が新たに提示し、「心のバリアフリー」の推進を打ち出した。市町村に、街中のスロープや障害者トイレの位置などがわかるバリアフリーマップの作成と提供を促したり、事業者に職員への研修を求めたりしている。
 今回の法改正を「社会へのメッセージ性が高く、意義が大きい」と評価するのは、障害者団体「DPI日本会議」副議長で、障害者の自立生活を支援するNPO法人ちゅうぶ(大阪市)代表理事の尾上浩二さん(60)。中でも、「教育的な効果がある」と期待するのが、公立小中学校を新築したり、増改築したりする場合にバリアフリー化が義務づけられたことだ。
 現在、義務化の対象の建物は床面積二千平方メートル以上の病院、店舗、図書館、特別支援学校など。公立小中学校は、避難所や選挙の投票所などとして障害のある住民も多く利用する一方、義務化の対象外だ。大阪府など独自に対象に含める自治体もあるが、避難所に指定され、障害者ら配慮が必要な人の利用が想定される小中学校の校舎のうち、段差が解消されているのは66%(一九年四月現在)にとどまる。
 改正法では、「心のバリアフリー」の教育や啓発への国の支援も盛り込まれた。尾上さんは、学校でバリアフリー化が進み、障害のある子もない子も共に学ぶことで「障害を自分たちの問題として捉えられるようになる」と指摘。「バリアフリー化が進めば、だれもが自由に移動できる。障害は、社会や環境のあり方でつくられていると気付くきっかけになる」と話す。

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