<小林深雪の10代に贈る本> 「未来の自分」を考え始めたら

2019年12月23日 02時00分
 令和元年も、もうすぐ終わり。今年は、どんな年でしたか? 年末年始に、この1年を振り返り、来年だけでなく、未来について考えてみませんか? 「自分はどんな大人になるんだろう?」。そう考え始めた10代に贈りたい3冊です。

◆大学は断然地方

 <1>万城目(まきめ)学著『べらぼうくん』(文芸春秋、一三二〇円)
 <大学受験に失敗した。/はじめて人生について、まじめに考えた><何のために勉強するのか。/果ては何のために生きるのか>
 万城目学さんの最新エッセーですが、受験や進路に悩む十代にぜひ読んでほしい。
 大学受験、浪人、京都での大学生活、就活、静岡での社会人生活、退職して無職に。
 万城目さんの<ひたすらうまくいかなかった日々>が、ユーモラスにつづられていて、笑ってしまいます。でも、その挫折や失敗こそが、思ってもみない新しい場所へ、自分を連れていってくれるのかもしれません。
 大学に入学した頃は、小説家になるなんて想像したことすらなかったのに、万城目さんは、小説を書き始めるのですから。
 大学に行くなら東京よりも地方での一人暮らしを断然オススメする。万城目流会社の選び方とは? 生きる上でのさまざまなヒントをもらえます。

◆半世紀前の10代は…

 <2>庄司薫著『赤頭巾ちゃん気をつけて』(新潮文庫、五〇六円)
 舞台は、一九六九年の東京。大学紛争により東大入試が中止に。主人公の薫くんは、当時、東大への進学者が最も多かった日比谷高校の生徒です。さあ、これからどうする?
 「みんなを幸福にするにはどうすればよいか」。その問いの答えを真剣に探す薫くん。でも、その一方で、お行儀のいい優等生である自分にいらだちも感じています。
 <気楽にのんびりと、みんなとおんなじに面白いことにジャンジャン手を出して、ガンガンと愚痴や不平を並べたて(中略)おれはこんなに弱いんだ、だらしない男なんだと同情を誘い、それがだめなら時代のせいだとかなんとか言って開き直って、そしてもしまだ頑張ったりしてるやつがいたらあの手この手で足ひっぱって。ほんとにぼくは何を我慢して頑張っているのだろう?>
 十代の自意識や悩みは半世紀前でも、今と変わりません。ネット上では、みんなが不平を並べ、人の足をひっぱり、炎上が絶えません。でも、負の方へ流されそうになる薫くんをギリギリの所で救ったのは赤頭巾ちゃんだった?
 最後の薫くんの決意表明は、読み返すたびに、いつも胸が熱くなります。ぜひ、シリーズ全四作を読んでください。

◆未知の国、無一文でも

 <3>犬養道子著『お嬢さん放浪記』(角川文庫、九二四円)
 戦前の首相、犬養毅(つよし)を祖父に持つ犬養道子さんは、戦後間もなく海外への渡航も難しい時代に欧米各国を旅します。
 といっても親を頼っての優雅な旅ではなく、最初は奨学生として。その後は無一文になったりもする貧乏旅行です。
 でも、その非凡な発想力と行動力で、どんな困難があろうとたくましくサバイバルしていきます。フランスでの「お城をもらった話」などスケールの大きさに驚かされます。
 そして、どんな人種や階級の人にも偏見がなくフェアである犬養さんは清々(すがすが)しくて、とにかくかっこいいのです。
 <どんな未知の国に一人で行っても自分は一人きりではないのだ、(中略)「友情のパスポート」はどこにでもある、どこに行っても探せば必ずみつかるのだ>
 十代の頃から、折に触れて読み返す大好きな一冊です。読むと未来を切り開く勇気と元気をもらえます。
<こばやし・みゆき> 『おもしろい話が読みたい! チェンジ!』(講談社青い鳥文庫)発売中。
<お断り> 「東京エンタメ堂書店」は本日が年内最終で、新年は1月6日スタートです。

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