プロ野球の白熱プレー、洗濯で後押し 選手のユニホームをクリーニング<準備OK!スポーツが戻ってくる>

2020年6月18日 16時21分

ユニホームを丁寧にたたむ高山さん=いずれも東京都江東区の高山ランドリーで

 グラウンドへと一歩、足を踏み入れる。その瞬間、プロ野球選手のユニホームはいつだって汚れ一つなく、真っ白だ。決して新品ではない。支えている洗濯のプロがいる。19日に迫る約3カ月遅れの開幕に向け、ユニホーム専門のクリーニング店「高山ランドリー」の店主、高山準一さん(74)は心を躍らす。
 東京都江東区。工場や住宅が居並ぶ一角に高山ランドリーはある。壁には親交の深い選手たちから贈られたユニホームがずらり。「よくゴルフや飲みに行った」という元ヤクルト監督の若松勉さんが現役時代に付けていた背番号1、昨季限りで現役を引退した楽天・今江敏晃育成コーチのロッテ時代の1着…。「選手と直接会えて関係を築ける。それが仕事の楽しみの一つ」と話す。

壁に飾られた選手たちのユニホーム

 だが、その楽しみも今年はコロナ禍で奪われた。例年であれば、各球団が春季キャンプを終えて首都圏でオープン戦が始まる3月中旬ごろから忙しい日々を送っているはずだった。それが一変し、あるはずの仕事がない。「仕方がないとはいえ、何もできない。体もなまった」。4月の売り上げは1万4000円ほど。年間の売り上げも半減を見込んでいる。
 他の店舗で修業していた高山さんが、この地で独立したのは38歳のとき。野球だけでなくバスケットボールやバレーボールなどのユニホームも扱う。プロ野球は主にソフトバンクや西武、楽天、中日などの関東ビジター時を担当している。
 午後6時開始のナイターの場合、まずは試合前に球場に行って練習着を回収。試合終了のタイミングを見計らい、再び球場や宿舎へ。汗や泥が染み込んだ大量の勝負着を店舗に持ち帰り、日付が変わるころに仕事は本格化する。

高山準一さん

 洗い、乾かし、アイロンをかけ、きれいに折り畳む。身近な洗濯が、職人の世界になればひと味もふた味も違ってくる。高山さんの場合、ユニホームの上下やアンダーシャツ、靴下など品目ごとに洗浄力の違う複数の洗剤を使い分ける。詳しくは「企業秘密」。汚れの程度によって洗浄する湯の温度も細かく調整する。数人のアルバイトと手分けし、多いときでは1000点にも及ぶ衣類をきれいにしていく。長年やっているからこそ、選手ごとに汚れや傷む箇所の傾向も把握している。
 宿舎へと届け、仕事が全て終わるのは午前6時ごろ。「ちゃんと納品してほっとしても、しわになっていないか異物が入っていないか。何十年やっていても心配」。ようやく眠りに就くのは午前9時すぎだという。
 6月に入って練習試合が始まり、仕事は徐々に本来の姿を取り戻しつつある。ユニホームという選手の私物を扱うだけに、ウイルス対策にも気を使う。すすぎの際に消毒効果が期待される溶剤を新たに加えるなど工夫を凝らす。
 球場から離れていたからこそ、最近になって改めて実感したことがある。「やっぱり、現場はいいね」。桜ではなく梅雨の季節に始まる新たなシーズン。いつもより期間は短くなったが、選手に負けじと、大ベテランも戦い抜く。 (中川耕平)
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 プロ野球が19日に開幕し、サッカーのJリーグも再始動が近づいてきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響でほとんど止まっていたスポーツが、いよいよ本格的に戻ってくる。アスリートとともにこの日を待ち望み、いつ試合があってもいいように準備を整えてきた人たちを紹介する。 =随時掲載します。

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