<小林深雪の10代に贈る本> アジアを知るきっかけに

2019年11月25日 02時00分
 香港でのデモの長期化が心配です。その一方で、台湾からやってきたタピオカが大ブーム。なにかと話題になる近隣のアジアの国のことを、わたしたちは知っているようで知りません。アジアを知るきっかけになる3冊です。

◆異国でもらった希望

 <1>大島真寿美著『香港の甘い豆腐』(小学館文庫、五〇三円)
 自分に自信がなく、人とうまくつきあえない。高校もサボりがち。生きることがつまらない…。そんな十七歳の彩美(あやみ)は、あることがきっかけでひと夏を香港で過ごします。
 初めて触れる異国、異文化は驚きの連続です。香港は、とにかくにぎやかで雑多であやしい雰囲気。路地裏は古めかしくても、ビル街は最先端。狭いのに思いのほか、広がりもあります。
 そこで暮らす人たちも、服装も個性も、それぞれがてんでバラバラです。みんな、はっきりものを言うし、せっかちだけど、でも、親切です。
 日本にいるときは、電車で席を譲る、そんなちっぽけなことでさえ、「いい子ぶっている」と思われないかと気にしていた彩美。ところが、異国にいるだけで、そんな自分に笑えてくるようになります。
 臆病だった彩美が、ひとりで食堂に行き、広東語で注文します。それが通じたとき、彩美の胸に「希望」と「未来」が見えてくるのです。作者は、先の直木賞を受賞しました。

◆「天安門事件」リアルに

 <2>楊逸(ヤンイー)著『時が滲(にじ)む朝』(文春文庫、四七二円)
 香港のデモを見ていると、天安門事件を思い出します。
 今から三十年前、北京市にある天安門広場でデモを起こした学生たちに軍隊が武力行使し、たくさんの死傷者が出た事件です。この本は、そのデモに参加した学生が主人公。
 中国の貧しい農村に生まれた二人の少年は、必死に勉強し、難関の名門大学に合格。実家を離れ寮に入ります。
 それは、<まるでモノクロ映画の中から、急に色彩の鮮やかなカラー映画の銀幕に飛び込んだよう>で、二人は急激に田舎での十八年が遠くなっていくような高揚感を覚えます。
 そんな二人は、同級生から、北京では中国の官僚たちの汚職と腐敗に反対するため、大学生たちが集会やデモ行進、座り込み、ハンストを行っていることを聞かされ、衝撃を受けます。
 民主主義とは? 資本主義とは? 帝国主義とは? よくわからないまま、二人は「国をよりよくする」ために学生運動に参加しますが…。
 中国出身の作家が書いた小説だけあって、すべての描写がリアルです。今こそ読み返したい本。芥川賞受賞作。

◆植民地だった台湾で

 <3>乃南アサ著『六月の雪』(文芸春秋、二〇三五円)
 声優になることにあこがれがんばってきた未來(みらい)は、ついに、その夢に挫折。これからどうしよう。そう思っていたところ、祖母から、生まれ育ったという台湾の話を初めて聞かされ驚きます。
 日本人なのに台湾で生まれたの? だって、台湾は日本だったから。祖母の答えに未來は驚きます。
 台湾が日本の植民地だったなんて知らなかった。それって、日本が支配していたってこと? それなのに、なぜ東日本大震災の時、台湾の人たちは、多額の義援金を集めてくれたんだろう? 
 祖母の人生と台湾に興味を持った未來は、台湾に旅立ちます。ケガをして動けない祖母の代わりに、祖母がもう一度見たいという育った家と「六月の雪」を探してみよう。
 そして、訪れた台湾では、数々の出会いがあり、未來は自分の人生を見つめ直します。
 学校では教えてくれない台湾と日本の歴史が、よくわかる読み応えのある一冊です。
<こばやし・みゆき> 『おもしろい話が読みたい! チェンジ!』(講談社青い鳥文庫)発売中。

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