敵基地攻撃も議論 政府「国家安保戦略」改定へ、秋にも結論

2020年6月20日 07時15分

海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」

 安倍晋三首相が敵基地攻撃能力保有の検討を含む安全保障戦略の見直しを表明したことを受け、政府は外交・安保政策の指針「国家安全保障戦略」の初改定に向けた議論を始める。ミサイル防衛については、九月末が締め切りの二〇二一年度予算編成の概算要求までに取りまとめる方針。政府当局者が明らかにした。敵基地攻撃能力を保有すれば、防衛政策の根幹である専守防衛が骨抜きになる上、軍拡競争をあおり安保環境を悪化させる恐れもある。 (上野実輝彦、山口哲人)

■ 前倒し

 「安全保障戦略の在りようについて、徹底的に議論をしていく」。菅義偉(すがよしひで)官房長官は十九日の記者会見で大幅見直しの可能性を示唆した。国家安保戦略は第二次安倍政権発足後の一三年に策定された。十年後をめどに改定予定だったのを前倒しして国家安全保障会議(NSC)で議論を始める。
 配備計画停止を発表した地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」に代わる抑止力として、新たなミサイル防衛の在り方を検討。経済安保、新型コロナウイルス収束後の国際ルールも話し合う。

■ 変質

 敵基地攻撃能力を保有するかどうかは、日本の安保に根本的な影響を与える。
 敵基地攻撃は、迎撃困難な敵国のミサイルが発射される前に発射台などを破壊し封じ込める考え方。歴代政権は憲法に反しないとする一方で、専守防衛の観点から政策判断として保有を認めてこなかった。攻撃は同盟国の米国に任せ、日本は防衛を担う役割分担が基本路線だ。一八年に決定した新たな「防衛計画の大綱」でも明記は見送られた。
 だが安倍政権下で安保政策は徐々に変質してきた。集団的自衛権を一部容認して安保関連法の成立を強行。一八年の大綱と「中期防衛力整備計画」で、護衛艦「いずも」の事実上の空母化や、他国を射程に入れた長距離巡航ミサイルの購入を明記し、運用次第で敵基地攻撃能力を獲得できるようにした。

■ 唐突

 首相は十八日の記者会見で、議論を始める理由に北朝鮮のミサイル技術向上を挙げた。北朝鮮の新型ミサイル開発が分かったのは昨年。このタイミングでの戦略見直しは唐突だ。
 自民党中堅議員は「地上イージス導入が停止となり、代わりに何かやっている姿を見せようとしているのでは」と指摘する。同党内には、首相が政治主導で進めた地上イージスの配備停止の責任を覆い隠すために打ち出したとの見方が広がっている。
 菅氏は会見で「日米の役割変更は考えていない」と強調したが、数カ月の議論で拙速に結論を出そうとしていることへの懸念は消えない。
 元空将補で国際地政学研究所の林吉永事務局長は、敵基地攻撃能力の保有検討について「国民に問うべき重大な問題だ。保有すれば相手に日本を攻撃する口実を与え、安全保障を損なう」と指摘する。

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