「初めて」「すごい」 コロナを交えた闘い 将棋対局番組に異変

2020年6月20日 08時32分

感染防止策を施して再開されたNHK杯テレビ将棋トーナメント。14日放送の谷川浩司九段(右)と中村太地七段(左)の対局

 新型コロナウイルスは、テレビの将棋番組にも影響を及ぼしている。歴史と伝統ある「第七十回NHK杯テレビ将棋トーナメント」(Eテレ、日曜午前十時半)は四月に始まったが、五月に中断。今月十四日、七週間ぶりに再開されたが、感染対策を講じた対局の光景は異様な雰囲気を醸し出した。コロナ終息までの一時的な措置だが、しばらくは“異変”の対局を楽しむしかないようだ。 (山岸利行)
 「見えない敵と戦っているようだった」
 十四日の放送を見た日本将棋連盟の関係者は、こう印象を語った。
 収録があった東京・渋谷のNHK放送センター。通常は和室のセットに花や駒の置物、脇息(きょうそく)などが配置され、棋士は座布団に座って勝負に挑む。この日の放送では「感染防止のため特別なセットで収録しています」とのテロップが表示されたように、従来とは一変。谷川浩司九段と中村太地七段がマスク着用で椅子に座り、将棋盤を挟むようにアクリル板が二枚配置された状態で対局した。
 解説スタイルにも変化が見られた。従来はプロ棋士と司会の二人が大盤を挟んで画面に映っていたが、この日は距離をとって、画面上は森内俊之九段だけが映って解説する場面が多かった。棋譜読み上げと記録係の二人が横に並ぶスタイルも記録係だけにするなど、「密」を避けるための工夫が施された。
 対局前、谷川九段は「対局の環境が少し変わったが、将棋が指せるのは幸せ」、中村七段も「指せることに感謝」と謝意を表し、森内九段は「棋士も初めてのチャレンジ」と話した。
 トーナメントの再開を楽しみにしていた視聴者には、ある意味衝撃的な画面だったようだ。SNSでは「NHK杯のこんな場面、初めて見た」「コロナ対策ですごい対局風景に」といった驚きの声とともに、「どんな形でも再開されてうれしい」「このまま椅子対局でもいいのでは」といった反応もあった。

従来の対局風景。対局前に駒を並べる藤井聡太四段(当時)(右)と森内俊之九段=2017年9月3日放送(日本将棋連盟提供)

 NHKの担当者は椅子での対局とすることで「通常より二倍近い距離を確保している」とし、アクリル板の位置については「これまで経験のない試みなので、どれくらいの高さが最適なのか、試行錯誤を続けている」と明かした。
 リモート対局も検討したというが、対局場所の選定や立会人が必要になったり、アクシデント発生の可能性も考慮してスタジオでの再開となった。十四日放送のセットは感染防止が第一で「今後はその時々にふさわしいスタジオ内容を検討し、いずれは従来の対局場に戻したい」としている。
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 大きなタイトル戦がヤマ場を迎え、インターネットテレビでの中継も大いに盛り上がっている。最年少でのタイトル獲得が注目される藤井聡太七段は二十八日に棋聖戦第二局、これに先立つ二十三日には王位戦(本紙主催)の挑戦者決定戦もある。いずれの対局もAbemaTVが生中継する。同連盟では、対局室に入室するメディアを限定したり、対局後の棋士への取材をリモートにしたりとコロナ対策を徹底しながら、視聴者の期待に応える。
<NHK杯テレビ将棋トーナメント> 今年70回を数える早指し戦。1年を通してトーナメント戦を行い、これまでに故大山康晴、加藤一二三、中原誠、羽生善治といったそうそうたる棋士が優勝している。5月からの中断期間に放送した過去の名局では、故米長邦雄らベテラン棋士による軽妙な解説も放送され、ファンには好評だった。

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