集団免疫目指したはずが命の選別に…死亡率突出のスウェーデン

2020年6月21日 08時07分

欧州各国が都市封鎖中だった4月20日、スウェーデンの首都ストックホルムのレストランで楽しむ市民ら=AP・共同


 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に対し、スウェーデンはあえて厳格な都市封鎖をせず、「集団免疫」の獲得を目指す独自路線を貫いてきた。人口の六割以上が自然感染して抗体を得ることでウイルスに打ち勝つという世界でもまれな戦略だが、現時点で経済的メリットは少なく、死亡率は高い。「スウェーデン式」は失敗だったのか。 (ロンドン・沢田千秋)

◆わずかに成長

 三月以降、欧州各都市が厳しい外出制限などを行う中、スウェーデンはレストランや商店の営業を続け、市民は買い物や外食を楽しんできた。政府は在宅勤務の推奨や高齢者への面会制限などで、感染は抑止できると踏んでいた。
 効果は当初、表れたかに見えた。欧州統計局によると、今年一〜三月期の欧州連合(EU)の域内総生産(GDP)は前期比3・2%減。スウェーデンは0・1%増で、二十七カ国中、四カ国しかないプラス成長を記録した。
 だが、その後は暗転。経済協力開発機構(OECD)の今月の経済見通しでは、今年のGDP伸び率は感染の第二波が来なかった場合でも6・7%減。封鎖の遅れで欧州最多の死者が出た英国や、フランス、イタリアなどのユーロ圏よりはましだが、米国並みに落ち込む見込みだ。

◆命の選別

 GDP減は抑えられても犠牲は甚大だった。人口約一千万人の国で死者数は五千人を超え、死亡率は北欧四カ国で突出。死者の九割は七十歳以上だった。だが、保健当局によると、集中治療室に運んだ患者のうち七十歳以上は約22%、八十歳以上は3・5%のみ。医療崩壊を防ぎたい政府は「高齢患者をむやみに病院に連れて行かない」とのガイドラインを現場に通達していたのだ。「命の選別」だと非難の声が上がった。
 独自路線は、孤立という代償も招いた。フィンランド、ノルウェー、デンマークは十五日から互いの旅行者の受け入れを再開したが、各国ともスウェーデンを除外。デンマークのフレデリクセン首相は「スウェーデンとは置かれた状況が違い過ぎる」と突き放した。北欧観光が盛り上がる夏季休暇中に「スウェーデン飛ばし」が続けば、復興の大きな足かせとなる。

◆むごい実験

 唯一の望みは集団免疫の獲得だが、政府発表では、首都ストックホルムの抗体保有率は7・3%。希望者を対象にした民間の検査でも14%で、人口の六割以上にはほど遠い。
 感染対策を主導する疫学者アンデシュ・テグネル博士は今月、地元ラジオに「私たちの方針に改善すべき点があったのは明らかだ」と認めた。
 ただ、感染の第二波が訪れた場合、抗体保有率が比較的高いスウェーデン式が見直される可能性はゼロではない。同国のルンド大のピーター・ニルソン教授(疫学)は「高齢者の死亡率は高いが、第二、三波の攻撃を抑え、経済の打撃も軽減できるだろう。数カ月に及ぶ厳格な封鎖は人々の精神へのダメージが大きく、実行すべきでない」と政府の戦略を支持する。
 他方、同大のマーカス・カールソン上級講師(数学)は「文化や人口密度、気候が似た他の北欧諸国の十倍の人が死に、経済的利益もない。まったくの惨劇だ」と批判。「集団免疫には五万人の死者が必要だろう。これはあまりにむごい実験だ」としている。

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