井の頭に「モネの池」 よみがえった自然、動植物育む

2020年6月22日 07時03分

絶滅危惧種の水草「ツツイトモ」が水面を覆うように繁殖している井の頭池=いずれも三鷹市で

 昨年、「まるでモネの池のよう」とSNSで投稿が相次ぎ、話題を集めた都立井の頭恩賜公園内の井の頭池(三鷹市)。環境省レッドリストに掲載されている絶滅危惧種の水草「ツツイトモ」が池を覆うように大繁殖したのが、その理由。今年も水草は生育し、初夏の美しい自然景観が来園者らの目を楽しませている。
 明るい陽光に照らされ、水面に浮かんだ水草がまぶしく光る。水面に映る青空や白い雲。背景の涼しげな木々の緑…。なるほど、水草を睡蓮(すいれん)に見立てると「光の魔術師」と呼ばれたクロード・モネが描いた「睡蓮」を連想させる。
 公園を管理する都西部公園緑地事務所はツツイトモの成長を「三度のかいぼりを経て水質改善が進み、良い状態が保たれている証しでは」(中尾信行工事課長)とみている。
 井の頭池にとって六月は特別な季節。水深一・七メートルほどある池の底で春に発芽したツツイトモが水面まで葉を伸ばし、花をつける。池の水面に現れるやや黄みがかったクリーム色の小さな突起物が花だ。無数の「産毛」のように日の光に照らされ黄金色に輝く光景は息をのむほどだ。

井の頭池で見られるカイツブリ

 池一番の人気者の鳥カイツブリが「ケレレレレ」と元気な鳴き声を発しながら、盛んに餌を求めて水中を泳ぐ様子も観察できる。昨年より一組増えて七組になったつがいは今、子育て真っ最中。運が良ければ水草の上でのんびりと甲羅干しをしているスッポンに出合えるのもツツイトモが水面まで浮上しているこの時季ならではだ。
 ツツイトモはヒルムシロ科の水生植物。小型の多年草で細い線状の葉が特徴。井の頭池では、高度成長期の住宅開発の影響で湧水量が激減したのと外来魚の増加で水質が悪化し、長年姿を消していた。二〇一四年以降三回実施されたかいぼりの効果でよどんでいた池の水質浄化が劇的に進み、復活を遂げた。

トンボの姿も

 かいぼりのコーディネーターを務めた認定NPO法人生態工房(武蔵野市)の佐藤方博事務局長は「五月から七月にかけてのツツイトモの大群生は、よみがえった池の美しさを示す風物詩として定着していくのでは」と予想する。
 ツツイトモの見ごろは例年花の咲く六月だが、今年はボート乗り場や七井橋付近の成長が遅く、水面にまだ出ていない。このエリアの見ごろは七月にずれ込む可能性がある。
 文・花井勝規/写真・沢田将人
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