いずれは楽な相棒に 『定年夫婦のトリセツ』 人工知能研究者・黒川伊保子(いほこ)さん(59)

2019年6月2日 02時00分
 三十七万部のベストセラーになった『妻のトリセツ』(講談社+α新書)から半年。熟年夫婦のあり方を助言する新著を出した。前作は出産・子育て世代の女性をテーマにしたが、それより上の世代からの反響が予想以上に大きく、執筆を思い立ったという。
 両作品とも「夫婦間のトラブルは、男女の脳の使い方の違いから生まれる」とし、その解決策を示している。「夫婦はなぜムカつき合うのか」「『夫の禁則』五箇(か)条」…。新著の目次には、吸引力たっぷりの言葉が並ぶ。記者は結婚して十数年。軽い気持ちで読み始めたら「あるある」と妙に納得したり、「え、それってダメなの?」とドキッとしたり。最後まで一気に読んでしまった。
 妻に理不尽さを感じる男心も鋭く分析している。自分の夫の意見を参考にしたのでは? そう尋ねると、「全然違います」とばっさり。もともとは物理を学んだ人工知能の研究者。「ベースにしたのは人工知能の開発で得た知見で、それを皆さんに活用してもらいたかった」という。
 前作は多くの読者の共感を呼んだ。その一方、脳科学の専門家から根拠に乏しいとの批判があった。世間がジェンダーの問題に敏感になり、ユーモラスに性差を描くことにも異論がある。それらを含め「いい意味で“いじられ本”になった」と苦笑しつつ、「いろいろな考え方があって当然。反論はしません」と鷹揚(おうよう)に構える。
 書いた内容をすべて実践してきたわけではない。今でこそ息子夫婦を交えて円満に暮らしているが、過去には弁護士に相談して離婚協議書をつくったこともあった。「人生は何でもあり。離婚したっていいし、ずっと一人でもいい。一夫一婦制すら必要ないかも」とクールに言い切る。
 ただし、自身がたどり着いたのは「夫婦は長く一緒にいるべきだ」という結論。「いずれどんな女友達といるよりも楽な相棒になる。途中で投げ出さないほうがいい」と振り返る。
 次は女性向けに「夫のトリセツ」を書く予定だ。しかし理論構成が難しく、妻のトリセツよりも苦心している。「私は女性に生まれてよかった。だって、女性の相手をする方が難しいから」。物議をかもしそうな言葉をさらりと言ってのける胆力が、著書の面白さを生んでいるに違いない。
 SB新書・八六四円。
 (岡村淳司)

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