「夜の街」で深く考える

2020年6月22日 07時36分
 東京の中野で行きつけの小さな店は、居酒屋やガールズバーなどが立ち並ぶ飲み屋街の雑居ビル二階にある。今月十五日に営業を再開させた。四月七日に緊急事態宣言が発令されてから二カ月以上が経過。ステップ3に当たる「接待を伴わないバー」であるため、その間は自主的に休業していた。
 都による感染拡大防止協力金が振り込まれたのは、五月七日の申請から一カ月以上を経てからだった。一人で営業する五十九歳のマスターは、のしかかる家賃の支払いなどをアルバイトでしのいできた。「よく耐えたね」「何度も心が折れそうになったよ」。いつもなら好きな音楽などについて語り合うマスターとの話題は、どうしてもこの間の苦闘になってしまう。それでも仕事帰りの静かな夜の時間が戻ってきたことは、うれしかった。
 ただ、店内は三人までに限定。六席あるカウンターのイスを半分にし、テーブル席も「換気扇から離れているから」と、なくした。「これでやっていけるのか。お客さんは戻ってきてくれるのか」。不安は尽きない。
 マスターには学童保育施設に勤める妹がいる。「昨日、会ったんだ。今は児童があふれ、親からは『税金を使っているのだからしっかりやれ』などと厳しい言葉が飛んでくる。辛(つら)いと言って泣いていたよ」。必死に戦っているのは医療従事者だけではない。「夜の街」で深く考えさせられた。 (鈴木遍理)

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