コロナで休業 デイサービス 再開後も苦しい経営

2020年6月24日 07時35分

お互いの間隔を空けて機能訓練をするデイサービスの利用者たち=千葉県で

 新型コロナウイルスの感染拡大で、全国に緊急事態宣言が出された四月を中心に、デイサービス(通所介護)の休業や利用人数などの縮小が相次いだ。送迎や食事、入浴、機能訓練などで「三密」状態が避けられない上、利用控えなどが重なったためだ。事業者への介護報酬の支払いはサービスを提供した月の翌々月末なため、専門家は六月末以降に経営悪化が顕在化する可能性を指摘し、「倒産や廃業が相次げば、地域の介護基盤が崩壊する」と懸念する。 (五十住和樹)
 「両手を横に上げて」。インストラクターの声に合わせ、いすに座った六人のお年寄りが体を動かす。
 六月初め、千葉県内にある地域密着型通所介護(小規模デイ)での機能訓練。家庭的な雰囲気が売りのサービスも、感染防止対策でいすの間隔を空け、利用者同士の距離を取るなど様変わりした。
 送迎と到着時に職員が利用者の検温と体調をチェック。利用者にマスク着用を促し、一時間ごとに換気する。設備・備品のアルコール消毒なども徹底。三七度以上の発熱がある場合は利用を断っている。職員も検温やうがい、手洗いやマスクの着用を励行。食事の介助もなるべく向き合わずに行っている。
 これだけ手を打っても、運営会社の男性社長(47)の不安は消えない。「マスク着用や、うがい・手洗いがうまくできない認知症の人もいる。感染が起き、重症化させてしまったらどう責任を取ったらいいのか」
 この小規模デイは定員十人で、職員は十二人。感染者は出ていないが、四月中旬から一カ月半の休業・営業縮小に追い込まれた。
 きっかけは四月上旬、近隣のデイサービスで感染者が発生したこと。調べると掛け持ちの利用者が三人いることが分かった。
 三人はいずれも濃厚接触者ではなく、保健所も「濃厚接触者でなければ、受け入れても構わない」。しかし、職員から「二週間は遠慮してもらうべきだ」との声が出て、三人の入浴介助を渋り、入浴サービスは中止に。七十歳前後の職員が五人いて、「感染が怖い」と休暇を申し出たり、退職したりする人もいた。
 行政の指示や支援もなく継続は困難として、五月末までの休業を決めた。感染者を出していないのに休業したことに、「預け先がなくなる」と利用者の家族やケアマネジャーから不満が出たという。
 職員も利用者も感染から守るため、六月の再開後は職員の勤務ルールを明確化。ルールは、(1)三七度以上の発熱がある場合は出勤停止(2)三七・五度以上の発熱がある場合は医師が許可するか、解熱後二週間経過するまで出勤停止(3)濃厚接触者でなければ利用者は通常通り受け入れる−などだ。しかし、休業前後で利用者が約三割減るなど、経営へのダメージは深刻だ。送迎車などのリース代、また借入金返済もかさみ、資金繰りに追われている。
 コロナ禍で収入が減った家族からは「利用料の支払いを待ってほしい」の声も。事業者だけでなく、利用者の家族の危機感も強まっている。

◆今月末に顕在化か「公費支援が必要」

 事業者への介護報酬は、サービスを提供した月の翌々月末に支払われる。多くの通所介護が休業・営業縮小した四月の報酬支払いは六月末。高齢者福祉が専門の東洋大の高野龍昭准教授(56)は「ここで危機的状況が表に出るのでは」と懸念する。
 全国介護事業者連盟(東京)が五月六〜十二日に会員の千八百六十二の介護サービス事業所に行った調査では、コロナ禍が経営に影響した事業所は通所介護が最も多く、六百六十事業所の90・8%に達した。二月と四月の売り上げを比較し、二割以上減収した事業所は33・8%。「自己資金が枯渇した」「支援が手薄で融資返済が滞る」などの声があり、利用者が減り閉鎖した事業所もある。
 高野さんは「公費による減収の補填(ほてん)や、運営費の無利子貸し付けなど支援を早急に行う必要がある」と話す。

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