町工場の廃業、コロナ禍で加速 後継者難も重なり 東京・大田区

2020年6月25日 05時50分

大田区の町工場では新型コロナの影響で、経営を継続する企業も逆風が吹いている=4月15日、東京都大田区で

 
 新型コロナウイルスの影響で、中小の製造業者の経営が悪化している。財務省などの法人企業景気予測調査では、4~6月期の景況感は大幅なマイナス。とりわけ中小にとっては大企業の生産が回復せずコロナ前に受けた仕事のストックがなくなりつつあるからだ。東京都大田区の町工場では事業継続をあきらめるところも出始めている。専門家らは「廃業の加速はものづくりの危機だ」と懸念する。(西尾玄司)

◆取引先に創業50年の会社を売却

 「1日でも早く辞めた方が、ダメージが少ないと判断した」
 プラスチック部品を製造する、創業約50年の町工場を営んできた渡辺親さん(59)は五月下旬、会社を主要な取引先企業に売却した。コロナで二月後半から仕事が減り、売り上げは前年同期比で35%減となった。「海外の経済活動の停止はこれから影響してくる」―。回復は見通せず、後継者がいないこともあって廃業を決断。だが、従業員18人の雇用を守るため、取引先企業に会社の売却を打診し、合意した。渡辺さんにとっては廃業だが、子会社化されることで雇用は全員守られ、会社の名前も残った。
 渡辺さんは「20年前から海外の工場に仕事が移っていた上、人件費や原材料費の上昇が経営を圧迫していた。苦境を打開しようと、自社で開発した製品を広く売り出そうとしていたのだが…」と話した。

◆製造業が減り続ける大田区

 大田区内の製造業の事業所数は2012年の4993から、16年には4229まで減っている。経営者の高齢化に伴う後継者難などが主な理由だ。区が昨年実施した製造業の実態調査では、「廃業を考えている」経営者は約2割に上る。
 今は、経営者の廃業の決断をコロナ禍が後押ししかねない状況にある。財務省と内閣府が11日に発表した4~6月期の法人企業景気予測調査では、中小企業の景況判断指数はマイナス61・1で過去最低となった。このうち製造業はマイナス66・5。コロナの影響が観光業や飲食業から、中小の製造業に広がっていることが鮮明となった。

新型コロナによる業績不振で、会社を売却した渡辺親さん=東京都大田区で

 大田区内の中小製造業者約800社でつくり、町工場が集積する場所にある「大田工業連合会」が5月末に実施した、新型コロナの影響に関するアンケートでは、これまでの集計で、約半数の会員の売り上げが、前年同期より5割以上減っているという。
 連合会の舟久保利明会長(76)は「影響はリーマン・ショックや東日本大震災より大きい。世界中で感染が拡大するコロナは先が見えず、以前と同じように売り上げが戻るのか心配だ」と危機感を募らせている。

◆崩れる地域内での分業体制

 大田区の町工場で働く人の大半は正社員で、廃業が進めば働く場を失う。また、工場の集積で成り立っていた地域内の分業体制により、安価で短い納期で製品を仕上げることができる強みも薄れてしまう。
 中小の製造業に詳しい専修大学経済学部の遠山浩教授は「コロナはもともと経営の厳しい町工場の廃業を加速させるのは避けられない。オンリーワンの加工技術や製品を持つところだけが生き残るという傾向がより強まる」と話した。

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