外国人が消え、日本人も敬遠… 宣言解除から1カ月 浅草、高尾山に観光客戻らず<都知事選 現場から>

2020年6月26日 05時50分

都知事選が告示された18日、仲見世通りの入り口にある浅草寺の雷門前。外国人観光客の姿が消え、商店街の各店舗は経営悪化に直面している

◆旅館や土産物店が閉店

 新型コロナウイルスの感染拡大前は、外国人観光客らであふれ返っていた東京・浅草(台東区)。緊急事態宣言が全面解除されてから25日で1カ月たったが、訪れる人の数は以前のようには戻っていない。インバウンド(訪日外国人)が途絶えたことで経営が悪化した旅館や飲食店、土産物店などの閉店が続く。
 「売り上げの二本柱である外国人と修学旅行の学生の両方が駄目になった」。浅草寺前の仲見世通りで140年以上続く老舗土産物店「稲葉商店」店主で、浅草商店連合会理事長の稲葉和保さん(62)は嘆く。昨年10月の消費税増税のあおりを受け、年初から売り上げが減少。さらにコロナ禍が重なり、休業していた4~5月の収入はゼロ。営業を再開し、希望を抱いた6月も苦しいままだ。
 使える融資制度はすべて利用した。インバウンドは当面期待できず、国内観光客を目当てに店を開けるが、「コロナ禍で人が行くのは日用品を買えるところ。(優先順位で)観光は最後なんだと気付いた」。
 都内では新たに確認される感染者数が高止まりしており、今後も東京観光は敬遠される可能性がある。稲葉さんは「新しい都知事には、コロナの封じ込めに全力を尽くしてほしい。それが観光業が上向くことにつながる」と訴える。

◆外国人スタッフを減員

外国人観光客が激減した高尾山の山麓

 京王線高尾山口駅(八王子市)の構内にある観光案内所。3月に案内所を訪れた外国人はわずか23人。1昨年同月の717人、昨年の644人から激減した。例年は書き入れ時の4、5月は、案内所そのものが閉鎖していた。
 登山口に程近いゲストハウス・カフェバー「高尾山ベースキャンプ」。昨年11月に開業し、客でにぎわっていたのもつかの間、経営する宮沢宏和さん(40)は「3月以降、外国人が消えた」と肩を落とす。
 東京五輪の期間に入っていた予約は、延期により18連泊をはじめキャンセルが続出。3人いた米国などの外国人スタッフも感染拡大後、1人に。宮沢さんは「施設をリモートワークの拠点にするなど、新たな業態も考えなければならないが、都や国の支援がないと破綻する」と切実だ。
 くしくも19日、高尾山を中心とした有形無形の文化財が、都内で初めて文化庁の「日本遺産」に選ばれた。予定通り五輪が開かれていれば外国人呼び込みの起爆剤になったはずだが、認定に奔走してきた八王子市職員の表情は険しい。
 市は国内からの誘客に力を入れ、長期的なPRにつながる戦略の模索を始めている。担当者は「まずは多くの日本人に魅力を知ってもらいたい」と話す。
 都は国の支援策以外に独自で、大打撃を受けた宿泊業者に対し、自動チェックイン機を設置するなど非接触サービスの導入や、タクシー、バス事業者が感染予防のためにアクリル板やビニールシートを車内に設置した場合に補助金を出す。ただ土産物店や飲食店に対象を限定した支援策は行っていない。
 中腹にある飲食店の男性店主は「日本人とか外国人とか以前の問題。激減した客をどう取り戻すのか。それを考えるので精いっぱい」と悲愴(ひそう)感悲壮感を漂わせた。(天田優里、布施谷航)

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