ドライブインシアター 続々と復活 withコロナで接触避ける

2020年6月26日 07時01分

「ドライブインシアター2020東京タワー」

 日本で一九八〇〜九〇年代に流行した、車に乗ったまま映画が楽しめる「ドライブインシアター」が全国各地で復活している。新型コロナウイルスの感染拡大で、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保って観賞できる形態に再び注目が集まっている。かつては若者の車離れなどを理由に定着しなかったが、ポストコロナの文化として根付くか−。
 六月十三日から、千葉市の稲毛海浜公園駐車場で行われたイベント「DRIVE IN PARK CHIBA」。日が落ちると、五百インチのスクリーンに映画が映し出された。外出自粛を続ける人に映画を楽しんでもらおうと複数の地元企業が初めて企画した。
 「久しぶりにマスクなしで映画を楽しめた」。結婚前、夫と千葉県内のドライブインシアターをよく訪れたという千葉市の名畑美直子さん(49)は、夫と二人の息子と観賞。「車内で周りに気を使わずしゃべりながら見られるのがいい。思い出をよく息子に話していた」と満足そう。

神奈川県から訪れたカップル

 神奈川県厚木市から訪れた加藤大貴さん(25)と増田未沙来さん(25)は外出自粛を経て、久々のデート。「まだ感染が心配だし、距離を空けて座らないといけないのは寂しい。車内の方がくつろげて映画館よりいいかも」と増田さんは話す。

東京から訪れた大学生4人組

 十三〜十五日の三日間、雨に見舞われる日もあったが、百台の駐車スペースが連日ほぼ満車。車内でテーブルに食べ物を広げ、キャンプ気分で楽しむ家族連れも。東京都の女子大学生四人は車のバックドアを開け、並んで腰掛けてスクリーンを見上げていた。イベントは八月末ごろまで不定期で開催されるという。

上映前に食事する家族=いずれも千葉市美浜区で

 このイベントでは、プロジェクターを使ってスクリーンに投影、FM電波で送信した音声をカーステレオで受信する。上映前にテスト音声を流すと、車両が一斉にライトを点灯させて「OK」の合図をした。
 ドライブインシアターは第二次世界大戦前に米国で生まれ、日本では八〇年代から商業施設に併設されるなどして広がった。日本映画製作者連盟の担当者は「当時の映画館より大きいスクリーンを、家で見るような感覚がカップルや家族に受けたようだ」と話す。
 だが、九〇年代後半になると、シネマコンプレックス(複合映画館)の台頭もあり、徐々に下火に。同連盟の担当者は「シネコンと違い、上映数は夜に一〜二本程度で、収益が浮き沈みしやすかった。若者が車を使わなくなったことも影響したのでは」と指摘する。

上映前の音楽イベントを楽しむ人たち=東京都港区で

 そんな中、新型コロナウイルスの感染拡大で、他者との接触を避けて観賞できる形態が再び評価されるように。四月の緊急事態宣言発令後、山梨県や北海道、広島県と、各地で単発のイベントとして開催されている。今月二十日には東京タワーの駐車場でも開かれ、約百人がライトアップされた東京タワーの下、映画を満喫した。
 東京タワーでのイベントを開いた企画チーム「Do it Theater」(東京都目黒区)は、空き地活用策などとして、二〇一四年から地方自治体や企業にドライブインシアターを提案してきた。感染拡大後の今年四〜五月には、自治体などから約二百件の相談が寄せられたという。
 同チーム代表の伊藤大地さん(33)は「表現やストレス発散の場が限られる中、車内空間で楽しめるエンターテインメントとして見直された」と実感する。
 コロナ禍をきっかけにオンラインでのコミュニケーションや娯楽が増えているだけに、体験自体が楽しめるオフラインイベントは今後、より価値が高まるという。「電気自動車(EV)を対象に環境に配慮したイベントも開催できたら。地方の観光誘致にも活用できる。コロナ収束後も、常設化を目指していきたい」
 文・太田理英子/写真・松崎浩一、潟沼義樹
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