棋聖戦、王位戦で挑戦権を争った「もう1人の主役」 謙虚な努力家・永瀬拓矢二冠<頂へ 月刊藤井聡太七段>

2020年6月26日 14時00分

第61期王位戦挑戦者決定戦で永瀬拓矢二冠(左)を破り、感想戦で対局を振り返る藤井聡太七段=23日夜、東京都渋谷区の将棋会館で(日本将棋連盟提供)

 激しいひと月になった。4日、棋聖戦挑戦者決定戦で初のタイトル挑戦を決めた高校生棋士、藤井聡太七段(17)は、わずか4日後の8日、渡辺明棋聖(36)から初白星を挙げた。続く王位戦挑戦者決定戦でも23日、挑戦者に決まった。両棋戦とも、藤井七段と挑戦権を争ったのは永瀬拓矢二冠(27)=叡王・王座。その“もう1人の主役”に焦点を当てよう。 (岡村淳司)
 1年前、杉本昌隆八段(51)の「昇段・昇級を祝う会」が名古屋市であった。
 遠方からベテラン棋士が駆けつける中、意外だったのが叡王戦で初タイトルを取ったばかりの永瀬二冠の姿。永瀬二冠は横浜市出身だ。東海のベテラン棋士と関東の気鋭にどんなつながりが? 疑問は半年後、日本将棋連盟の機関誌『将棋世界』を読んで氷解した。
 今年1月号の巻頭で、観戦記者の鈴木宏彦さん(64)による、永瀬二冠へのインタビューが載った。そこでは、永瀬二冠が奨励会時代に年間1万局の練習対局をしたことなど、自他共に認める「努力の人」の歩みがつづられていたが、そこに杉本八段の弟子・藤井七段の名前があった。いわく「彼と指していると、将棋が強くなりたいというきれいな気持ちが伝わってくる」。ライバルであることが目標だとも語っていた。現役のタイトルホルダーなのに、無冠の高校生棋士を絶賛できる純粋さに驚いた。
 実は永瀬二冠は藤井七段が対局で上京するのに合わせ、都内の「研究部屋」に集合し、月イチのペースでマンツーマンの研究をする仲。杉本八段のお祝いに駆けつけたのは、藤井七段を通じた縁だったようだ。
 23日の王位戦挑戦者決定戦は先手の藤井七段が「角換わり」に進めた。昼食休憩の直後、藤井七段は1時間半以上を投入。永瀬二冠との残り時間に大きな差がついた。しかし藤井七段は秒読みに追われながらも正確な指し手を続け、終盤、玉の早逃げで安全を確保すると、後手玉を攻め、一気に勝負を決めた。
 藤井七段に敗れた後、永瀬二冠は「1局を通して力負けという印象があった。藤井七段に追いつけるように、また勉強して頑張りたい」と謙虚に答えていた。天才肌の藤井七段に対し、努力家の永瀬二冠。棋譜は、若き2人が手掛けた珠玉の共同作品だ。

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