パラリンピック事業、再開できず 都の政策「パラバブルにしたくない」<都知事選 現場から>

2020年6月27日 14時00分

車いすラグビーの国際大会で、観戦に訪れた子どもたちと触れ合う選手たち=東京都渋谷区の東京体育館で


 いつ「現場」が戻るのだろう。東京パラリンピック開催を機に、障害者スポーツへの関心を高めようと進めてきた東京都のパラリンピック関連事業。体験会や観戦会といったイベントはまだ再開できず、このまま都民の関心がすぼんでしまう懸念すらある。(神谷円香)

◆パラリンピックの勢いに乗るはずが…

 「当初はパラリンピックの勢いに乗って、直後の秋に参加者を募集する予定だった」。障害者スポーツの次世代選手発掘プログラムの担当者は声を落とす。新型コロナウイルス禍で東京大会は延期となり、第二波も心配される中、予定通り秋にできるかは未定だ。

昨年12月に開かれたパラスポーツ次世代選手発掘プログラムで、トライアスロンで用いるハンドサイクルを体験する参加者=東京都文京区の文京総合体育館で

 昨年12月に文京総合体育館であったプログラムには60人が参加。国内競技人口が少ない車いすフェンシングや、冬季競技のパラアイスホッケーも体験してもらった。だがコロナ対策で都の貯金に当たる財政調整基金は激減。来年度の予算編成によっては、このまま事業が終わる可能性もある。担当者は「来年もやりたい気持ちはある。でも大会を華美なものにしないともあり、どうなるか…。組織改編も課題。パラリンピック部も残るのか…」と先の見えない不安が募る。
 以前は福祉保健局の管轄だった障害者スポーツ。東京大会の開催が決まると、2014年にオリンピック・パラリンピック準備局が発足。パラリンピック部もでき、イベントや広報活動が一気に盛んになった。
 近年の都民への調査では、障害者スポーツを実際に見た人はほとんどいなかった。「パラリンピックの成功なくして東京大会の成功なし」と唱える小池百合子知事が就任した16年、都は企業などと連携し障害者スポーツを盛り上げるチームを結成、国内大会で観戦会を開いてきた。

◆登録133万人、チケットも好調、成功のはずが

 無料で誰でもメンバーになれるこの「TEAM BEYOND」の登録者数は現在、133万人を超える。区や市も大会会場近くの学校を観戦に招き「パラリンピックも見に来てね」と訴えてきた。チケットの申し込みも好調で、このまま「成功」で終われる予感はあったはずだ。

昨年12月に開かれたパラスポーツ次世代選手発掘プログラムで車いすフェンシングを体験する参加者(右)=東京都文京区の文京総合体育館で

 ただ課題も見え隠れしていた。「母のように家に閉じこもってばかりの人たちを、どうか置き去りにしないで」。今年1月、歌手の大黒摩季さんがこう訴えたのは、都が昨年から開く「パラリンピックの成功とバリアフリー推進に向けた懇談会」の場だ。母親が病気で重度障害になってから、自身のコンサート会場でも、車いすの動線を利用者目線で考えるようになった。
 萩本欽一さんや市川海老蔵さんら各界の著名人、障害者アスリートらが意見交換するこの懇談会も、本年度はまだ開かれていない。議事録はすべて公開されているものの、そうそうたるメンバーのせっかくの発言は、華やかな大会が近づく中で埋もれていた。
 障害者スポーツに長く携わる人ほど「パラバブル」とこの数年の状況をやゆしてきた。東京大会が終わればはじける、と。開催の是非さえ問われる今、膨らませたバブルはどこへ飛び、都民に何を残すのだろうか。

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