戦争の記憶、どう継承…模索する若者たちがオンライン・シンポ

2020年6月28日 06時00分
 戦後75年となる今年、コロナ禍で戦没者の慰霊行事や原爆の被爆者による証言会の中止、縮小が相次いでいる。戦争体験者が高齢化で少なくなるなか、戦火の記憶をどう継承できるか考える「オンライン・シンポジウム」が20日に開かれた。10~20代の参加者がインターネットを介して語り合い、ヒントを探った。(中山岳)

戦争の記憶をどう継承していくかを若者たちが語り合ったオンライン・シンポジウム

◆基地、核、軍縮など語り合う

 「沖縄では学校で戦争はだめだと教わっても、外に出れば近くに米軍基地を抱えており、矛盾した世界がある」
 沖縄県宜野湾市出身の大学院生元山仁士郎さん(28)は、在日米軍専用施設の7割が集中する沖縄の現実をこう話した。同市にある米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設の賛否を問うため、2018年に市民団体「『辺野古』県民投票の会」代表として署名を集め、投票は19年2月に実施された。
 基地問題に向き合うきっかけの一つに、小学時代から平和学習で沖縄戦を体験したお年寄りたちの話を聞いてきたことを挙げる。元山さんは「15分くらい沈黙して言葉が出ない人やおえつする人など、語り口を鮮明に覚えている」と振り返った。
 沖縄のほか原爆に被爆した広島、長崎両県でも平和学習が盛んな一方、他の地方では学生が戦争を考える機会は限られている。教育に興味があるという千葉市の杉村元さん(18)は「日本の学校で習う戦争の歴史は、テストの点数を取るための暗記になりがちだ」と残念がる。
 世界を見れば、米国やロシアなど核兵器保有国の間で軍縮の動きが停滞し、日本は米国の「核の傘」に依存している。杉村さんは「核の脅し合いによる平和はおかしい。戦時中と今は日本の状況は違うにしても、みんなが同じ方向に流れる同調圧力の怖さは似ているのではないか」と述べた。
 会社員の関口純平さん(27)=群馬県桐生市=は、戦時中の同調圧力の恐ろしさを「国家が人を殺すことを正しいと教え込み、兵士たちはそのまま受け取って実行した」と語る。大学時代、戦時中に中国で兵士だけでなく現地住民も殺害した元日本兵の証言を知って心を動かされた経験から「人は被害者にも加害者にもなりうる。それを想像した時、戦争について考えやすくなるのではないか」と呼び掛けた。

◆ドイツではアプリを活用

 ドイツ・ベルリンの大学院に留学中の瀧元 深祈みきさん(27)は「ドイツでも戦争体験者が減っており、いかに語り継いでいくか課題になっている」。ただ、ドイツでは各地にある戦争にまつわる記念碑の情報をまとめてスマートフォンで閲覧できるアプリが開発されるなど、調べる手段も充実しているという。瀧元さんは「戦争の歴史に触れられるきっかけは多い。一般人が信頼できる情報にアクセスできることが大切だ」と強調した。
 シンポに登場した4人はいずれも、太平洋戦争の元兵士や被爆者らの証言記録を読み、証言者に向けて手紙を書く戦後75年プロジェクトに参加している。このプロジェクトは、戦争体験者と現代の若者をつなぐ試みとして5年前にも企画され、書籍「若者から若者への手紙 1945←2015」(写真落合由利子、聞き書き室田元美・北川直実、出版ころから)にまとめられた。
 共著者の一人の北川さんは「今の若者が、自分事として戦争や平和を考えるきっかけにしてほしい」と話す。プロジェクトは10~20代を対象に、書籍を読んだ上で書いた手紙を12月末まで募っている。問い合わせと手紙の提出は北川さん= officeyk@jcom.zaq.ne.jp =へ。

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