日本文化の危機、三味線の最大手「東京和楽器」が廃業へ 需要激減にコロナが追い打ち

2020年6月28日 05時50分

厳しい環境を説明する東京和楽器の大瀧勝弘代表

 三味線の最大手メーカー「東京和楽器」(東京都八王子市)が8月に廃業することになった。近年の需要の低迷や昨年10月の消費税率引き上げに加え、新型コロナウイルスの影響が追い打ちをかけた。個人経営からスタートし、前身の会社を経て創業135年、邦楽界を支えてきた老舗の幕引きに、業界では激震が走っている。(山岸利行)

◆4、5月は注文ゼロ


 「断腸の思い。4、5月は注文がゼロ。もともと大変だったが、これをきっかけに廃業を決めました」と話すのは大瀧勝弘代表(80)。135台の機械がそろう作業場では、職人たちが胴となる木材を削るなどの工程を黙々と行っていた。高い技術でプロや愛好家、小売業者から信頼され続けてきた。
 全国邦楽器組合連合会の調べでは、三味線の国内製造数は、1970年には1万4千5百丁だったが減り続け、2017年には10分の1以下の1200丁となった。同社でも10年以上前は年間800丁ほど製造してきたが、最近は400~500丁に減少していた。

三味線づくりに励む職人

 そこへ昨年10月の消費税率引き上げ、今年のコロナ禍も影を落とした。舞台公演や演奏会などは中止となり、修理や新調などの三味線需要もぱったり止まった。こうした状況でも、18人の社員の給料や家賃などを支払うため借金で工面してきたが、大瀧代表は「税理士にも厳しい現状を指摘された。見通しが立たず、私も若くない」。後継者のめども立たず、廃業の意思を固めた。
 当初は今月15日で畳むつもりだったが、追加注文が入ったためその完了見通しの8月15日まで続けることになった。残された時間は短いが、大瀧代表は「引き継いでくれる人が名乗り出てくれれば大歓迎」と存続に望みをつなぐ。

◆「大きな事件」


 専門誌「邦楽ジャーナル」の田中隆文編集長(65)は「ものすごく大きな事件。1社の廃業でなく、日本文化の危機。修理に時間がかかるなど、いろいろなところに影響が出ると思う。文化に対する国の予算も先進国では最低。東京和楽器の職人は国の宝と考えるべきだ」と懸念する。
 長唄三味線の人間国宝、今藤政太郎さん(84)は「私が使っている三味線にも東京和楽器のものもあると思う」と前置きした上で、「(三味線の需要減は)何年も前から言われていたが、来るべきものが来たし、困ったことになった。私たち演奏家も三味線需要喚起のため努力していきたい」と話した。

 東京和楽器 1885年、東京・深川で個人経営で創業。その後、杉並で会社組織となり、2002年に「東京和楽器」としてスタート。オリジナルの機械を使った胴や棹(さお)作り、職人の細かな手作業によって、用途や音楽分野に応じたさまざまな三味線を製造、修理してきた。

PR情報

伝統芸能の最新ニュース

記事一覧