<各駅停車>知事と手話通訳

2020年6月28日 07時34分
 新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)を契機に、多くの知事が記者会見に手話通訳をつけるようになった。
 都道府県ウェブサイトの動画を見た限りでは、コロナ禍にまつわる情報発信を巡っては五月までに全知事が導入していた。青森、宮城、秋田、新潟、山梨、徳島の六県を除く四十一知事は会見テーマを問わず常置しているようだ。
 言うまでもなく、手話は字幕と並び、耳の不自由な人の知る権利を保障する手段である。疫病の流行はもちろん、地震や津波、台風といった災害に直面し、正しい情報に速やかにアクセスできなくては命取りにもなりかねない。
 もっとも、手話通訳をつけるかどうかの是非を今ごろになって議論した知事がいるとすれば、人権感覚を疑われても仕方がない。
 埼玉県の大野元裕知事が初めて手話通訳を伴って会見したのは去る五月一日。コロナ禍拡大の警鐘を鳴らす緊急事態宣言が出されても、手話での情報発信が後手に回ったのは恥ずかしく悔しかった。
 障害のある人が生きやすい社会へ改革を−。六年前、日本はそう定めた障害者権利条約を批准、障害の有無にかかわらず等しく尊重される共生社会を目指すと世界に宣言したはずである。埼玉県も同理念を謳(うた)った条例を掲げている。
 さて、曲がりなりにも全知事が会見の場につけるようになった手話通訳。今後のコロナ禍の動向はともかく、よもや廃止を言い出す知事はいないと信じたい。人権意識の欠如を自ら表明することになるのだから。 (大西隆)

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