ホテル配膳人の失業相次ぐ 日雇い慣行、コロナ不況直撃 「常勤並み」でも休業手当なし

2020年6月29日 07時14分

仕事がなくなった男性の3月の給与明細。保険料などが差し引かれ手取りは約3500円だった

 ホテルのレストランや宴会、結婚式などで接客を担う「配膳人」。新型コロナウイルスの影響でホテルの利用者が激減していることを受け、休業手当などの補償も受けられないまま仕事を失う人が相次いでいる。ホテル業界では長年、配膳人をその日の需要に応じて日雇いで集める慣行が続いているが、実際には常勤に近い形で働く例も多い。専門家からは「慣行自体を見直すべきだ」という声も聞かれる。 (細川暁子)
 「三月の給料は手取り約三千五百円だった」。二十代から東京都内の同じホテルで配膳人として働いてきた男性(50)は力なく言う。
 ホテル業界は、日によって宴会場やレストランの稼働率の差が大きい。そのため、多くの施設が紹介所を通じ、結婚式が多い大安の週末など需要がある時限りの「日々雇用」の形で配膳人を雇い入れてきた。男性はホテルの運営会社と日々雇用の契約を繰り返してきたが、勤務日数は月に二十日以上と常勤と同じ。時給は約千四百円で、コロナ禍前の一月の給料は手取りで二十八万円にも。約十年前には会社の指示で雇用保険と社会保険にも加入した。
 しかし、三月から状況は一変。宴会などのキャンセルが続き、上司から有給休暇を消化するよう言われた。結局、働いたのは一日だけで、有休を八日分消化。総支給額五万二千八百五十円から、雇用保険料や健康保険料などを引かれた三千五百十円が振り込まれた。
 労働基準法は、会社の都合で労働者を休ませる場合は平均賃金の六割以上を休業手当として支払うよう義務付ける。しかし、四月に入っても会社側は有休消化を命じるだけ。仕事のめども立たない中、同月下旬には有休をほぼ使い切った。
 仕方なく失業給付金の受給に必要な離職票を会社に求めたところ、退職理由には「自己都合」とあった。「会社都合」に比べ、自己都合は受給開始時期が遅れたり受給金額が低くなったり不利だが、会社から配膳人に配られた紙には「日々雇用者である以上、解雇をするという概念はない」といった旨が書かれていた。
 男性は「休業手当を出してくれれば辞めずに済んだのに」と憤る。ハローワークに対し、離職理由について異議申し立てをした。さらに、今後、やはり休業手当の支払いなどを求める配膳人ら約二十人と労働組合を結成し、会社に団体交渉を申し入れる予定だ。
 厚生労働省によると、二〇一八年度、臨時や日雇いの配膳人は延べ五百一万人に上る。ただ、配膳人の紹介所約百社が加盟する「全国サービスクリエーター協会」(東京)の佐藤昭彦会長(49)によると、多くは男性のように常勤に近い形で働いているとみられるという。
 新型コロナ以降、「特に沖縄や京都などの観光地を中心に、配膳人が失業に追い込まれている」と佐藤会長は言う。休業手当だけでなく、中には雇用保険に加入させてもらえなかったため失業給付さえ受けられない例も。「政府は『多様な働き方』を推進するが、配膳人のように、不安定であいまいな立場の労働者の雇用を守る手だてがないことが浮き彫りになった」と話す。
 日本労働弁護団の江夏大樹弁護士(30)=東京法律事務所=は「配膳人と会社は労働契約を結んでおり、労働者の使い捨ては許されない」と説明。「配膳人は都合よく利用されやすい立場にある。こうした労働形態を続けてきたホテル業界の慣行自体を見直すべきだ」と強く訴える。

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