石垣市が尖閣諸島の字名変更へ 中国と台湾が反発…摩擦懸念する声も 

2020年6月29日 10時08分

10月から字名が変更される尖閣諸島。手前から南小島、北小島、魚釣島=沖縄県石垣市で

 沖縄県・石垣島から北西へ約170キロ離れた尖閣諸島の字名を石垣市が「登野城とのしろ尖閣」とすることに、共に領有権を主張する中国と台湾が反発している。検討段階では摩擦を懸念し「無理に変更する必要はない」との意見があったのに、顧みられることはなかった。専門家は「中台との緊張を高めるだけ」と市を批判している。 (石井紀代美)
 「中国が活動をエスカレートさせ、領海侵犯の頻度が高まる可能性がある」。2013~14年に同県副知事を務めた経験もある琉球大の高良たから倉吉くらよし名誉教授(琉球史)はこう語る。
 市議会は22日、中山義隆市長が提出した、尖閣諸島の住所地の字名を「登野城」から「登野城尖閣」に変更する議案を可決。10月1日から効力が生じる。市の担当者は「市街地の字名の登野城と混同して起きる行政手続きの事務的ミスを防ぐため」と説明した。
 1960年代後半、尖閣諸島周辺の海域に石油資源が埋まっていると指摘され、70年代に入ると中国と台湾も領有権を主張するようになった。2012年9月に民主党政権(当時)が5島あるうち魚釣島、北小島、南小島の3島を地権者から購入し国有化すると中国が強く反発。公船による尖閣沖での領海侵入を常態化させ、中国国内で日本を批判するデモが頻発した。
 字名変更を求める声は3島の国有化以前からあり、尖閣諸島に本籍を置く人や、「尖閣諸島を守る会」元顧問の片山さつき参院議員ら保守系の国会・地方議員らが「日本の領土だと明確にするため、尖閣と分かる住所にしてほしい」と要望。中山市長も16年の市議会で字名変更は「非常に意義深い」「国内外にPRする手段」と答弁していた。
 市は17年10月、総務部や企画部などの部課長12人で構成する検討委員会を設置。議事録によると、初回に「国際的な問題にならないか」との発言があった際、委員長の知念永一郎・総務部長は「(変更に伴う)事務手続きに関することに絞って議論を進めたい」と返答している。
 検討委は専門家の見解も求めた。長崎純心大の石井望准教授(漢文圏文芸)が「歴史を重んじ『字登野城尖閣』を推薦する」としたのに対し、前出の高良氏は「島に人々が居住し、生活上の利便性から整理、変更が必要というなら説得力があるが、事を急ぐ理由が対外的に確保されていない」と主張した。ただ、その後の会合で、高良氏の意見について議論した形跡は議事録に見当たらなかった。
 翁長致純・市総務課長は「議事録はあくまで要点筆記。高良氏の意見も紹介している。検討委は字名に『尖閣』を入れるのが前提で、どんな名前にするか、変更に伴う作業は何かなどを議論した」と述べた。
 「ようやく実現した。議会で字名に尖閣を入れるべきだと言い続けてきた」(「尖閣諸島を守る会」代表世話人の仲間均市議)との声がある半面、字名変更はマイナスの側面が大きい。拓殖大の下條正男教授(日本史)は「難癖をつける口実を中国に与えただけ。日本の領土であることを裏付ける歴史的事実をはっきりさせ、各国に認識させるのが大切」と指摘する。
 「中国の主権への挑発であり違法なものだ」と外務省副報道局長が述べた中国だけでなく、台湾総統府も遺憾の意を表明し、石垣市と姉妹都市の宜蘭県の都市で計画されていた提携25周年を祝う交流イベントは中止になる見込み。高良氏は「17年当時から状況は変わらず、名称変更の理由は見当たらない。気になるのは、石垣に入植者が多く、歴史的なつながりが深い台湾との関係。草の根レベルで交流し、蓄積してきたものが損なわれないか心配だ」と話した。

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