小樽でクラスター「昼カラ」に自粛要請 特定業種を悪役にする理不尽

2020年6月30日 05時50分

「東京アラート」の発令期間中に、新宿・歌舞伎町で注意喚起する東京都の職員ら=5日

 新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したとして、北海道小樽市が昼間にカラオケを提供する飲食店「昼カラ」の営業自粛を求めている。行政による業界の名指しは「夜の街」やパチンコ店などでも行われ、そのたびにバッシングが繰り返されてきた。専門家は「感染はどこでも起こりうる。特定の業種をたたいても、問題は解決しない」と警告する。(安藤恭子)

◆小樽市長 「昼カラ」自粛求め協力金検討

 「緊急事態宣言下と同程度の状況。強い危機感を抱いている」。小樽市の迫俊哉市長は28日の記者会見で、昼カラ店の営業自粛を求める方針を明らかにした。小樽では昼カラ関連の感染者が濃厚接触者も含め36人に。26日には80代の男性が死亡した。
 市は自粛に応じた店への協力金も検討。市保健所の山谷智美主幹は「昼カラはどうしても『3密』の条件が重なり、飛沫感染もあり得る。これ以上感染を広げないための措置として、お願いした」と説明する。

◆高齢者の憩いの場

 昼カラはスナックや喫茶店が昼間の数時間カラオケを提供するのが一般的だ。「ワンドリンク付きで歌い放題」など安価で楽しめるスタイル。ソフトドリンクや軽食などを交え、地域の高齢者らの憩いの場となってきた。
 「昼カラがないと、売り上げは半分。1日数人でもお客さんが戻ってきたのに」。東京都北区の喫茶店で「昼カラ」を営む本間正一さん(72)は小樽のニュースに困惑する。透明な仕切り板や消毒液、カバー付きマイクを1人1本用意するなどし、15日に昼カラを再開したばかりだ。
 80代中心の常連客らには「店に来られて元気になったよ」と喜ばれた。「ひとり暮らしのお客さんも多く、近況を語り合う場でもある。とれる対策はして安心してもらいたいけれど、他に何をすれば良いのか…」(本間さん)

◆SNSの批判に水商売協会「一括りは理不尽」

 「昼カラ」の感染者に対し、SNSでは「自業自得」「我慢しろよ」などの批判が吹き荒れている。屋形船、ライブハウス、スポーツジム、パチンコ店、ホストクラブやキャバクラ、風俗店などの「夜の街」…。行政が特定業界にクラスターの恐れなどを指摘し、メディアが取り上げ、業界ごと批判される事態が繰り返されてきた。
 水商売業界の健全化に取り組む一般社団法人「日本水商売協会」の甲賀香織代表理事は、「対策を講じている店もあるのに、『夜の街』と一くくりに悪者扱いされるのは理不尽。小池さん(百合子知事)が言うたび『営業の邪魔をしないで』というのが、多くの経営者の本音」とため息をつく。
 協会では、マスク姿での接客などコロナ対策のガイドラインを作ってきた。甲賀さんは「居酒屋でもオフィスでも感染するのに、水商売だけ狙い打ちされるのはおかしい。行政には、平等に事業者の対策を評価してもらいたい」と求める。

◆特定の業種を槍玉に上げるのは差別に

 精神科医の香山リカ氏によれば、昼カラにせよ夜の街にせよバッシングを受ける業態には遊興の要素がある。「同調圧力の中、我慢を強いられてきた人たちの感染への不安に加え、自由に遊ぶ人への羨望やねたみもある」とみる。
 だが、感染は業種ではなく、状況によって起こる。「特定の業種をやり玉に挙げるのは差別につながる。クラスター対策の負の部分の表れで、政治家は否定のメッセージを発するべきだし、バッシングをあおる報道姿勢も見直すべきだ。感染者が排除を恐れ、受診しづらいと思うような風潮は、感染拡大防止の観点からも変えていく必要がある」
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