リニア延期へ 科学的議論で不信拭え

2020年6月30日 07時27分
 リニア中央新幹線の二〇二七年開業が延期の見通しとなった。水問題で未着工の静岡工区を巡り、JR東海と静岡県のトップが会談したが不調だった。科学的知見を基に、打開策を探りたい。
 リニアは総工費九兆円の大プロジェクト。東京−大阪間を一時間七分で結ぶ。先行着工した品川−名古屋間二百八十六キロのうち、静岡工区は南アルプスの直下を貫くトンネルの一部で約九キロ。一方、静岡県には沿線都県で唯一、駅がない。
 JRは「トンネル掘削で水源が重なる大井川の水量が毎秒二トン減る」と予測。これに静岡県は「全量を戻さなければ六十万人が住む中下流域の水供給に大きな影響が出る」と主張した。
 JRは一時「全量を戻す」と答えたものの、水の一部が他県に流出せざるを得ない期間があることが分かり、県は着工を認めてこなかった。リニアの是非論ではなく、工法への強い疑念といえる。
 先週、JR東海の金子慎社長と同県の川勝平太知事が静岡県庁で会談した。焦点は、着工に向けたヤード(作業基地)の整備着手。金子社長は「トンネル本体工事とは別。六月中に着手しないと二七年開業は困難」と訴えたが、川勝知事は「ヤード整備は本体工事と一体だ」と会談は平行線で終わった。川勝知事は会談後、着手を認めないと明言した。
 品川や名古屋のほか、長野県飯田市や岐阜県中津川市など途中駅の沿線では「二七年開業」を前提にした都市再開発計画が進行中。地下での駅舎建設が始まった名古屋では、再開発への用地買収も進む。開業のずれ込みは、こうした各都市の計画にも少なからぬ影響を及ぼすとみられる。
 大井川は中下流域で生活用水や農業、工業用水になっており、一九八〇年代にはダムで水量が減ったとして、住民と自治体が「水返せ運動」を展開した歴史もある。県や流域市町には「JR東海が過去、水量などの解析結果を迅速で分かりやすく説明してこなかった」との不信感も根強く、その解消が不可欠だろう。
 カギとなるのは、国土交通省の音頭で今年四月に発足した有識者会議。「工事による水資源や環境への影響回避・軽減」の議論が続いており、JRは今月の第三回会合で最新の対策案を提出している。
 川勝知事はリニア計画自体には反対ではないという。有識者会議の科学的・工学的視点での議論に立脚し、地元も十分に納得した上での着工を望みたい。

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