<ふくしまの10年・見えない放射能を描く>(1)感じた空気を伝えよう

2020年6月30日 07時34分

あやまち

 イラストレーターの鈴木邦弘さん(46)は二〇一五年三月に初めて東京電力福島第一原発がある福島県の浜通りを訪れた。事故から四年。報道が激減する中、自分の目で確かめようと思ったからだ。
 津波の痕跡が残り、人の姿がない。そんな光景に衝撃を受け、「見たもの、感じた空気を自分なりの表現で伝えなければ」と決心。避難指示が出た地域を中心に描き続け、各地で個展も開いてきた。
 この作品は一七年十一月、知り合いの元双葉町民が一時帰宅するのに同行し、海岸から原発を見た情景だ。秋空が広がり、海鳥が飛んでいた。「きれいなところだなあ」と思った。持参した線量計の値は毎時〇・四マイクロシーベルト。事故前の十倍ほどの値だが、原発の間近にしては意外なほど低い。
 しかし、視線を南に向けると、「八」の字に突き出した原発の防潮堤は、東日本大震災の津波で破壊されたまま。3号機原子炉建屋上には、ロールケーキ状の使用済み核燃料取り出し用のカバーが見えた。旧ソ連チェルノブイリ原発の建屋を覆う巨大シェルター(いわゆる第二石棺)を思い起こした。
 「自然の力に勝てるのか。原発は見えない放射能をまき散らした。人間は罪深い」。そう感じた鈴木さんは、「あやまち」をイメージしてこのイラストを描いた。
 (山川剛史が担当します)
 ご意見はfukushima10@tokyo-np.co.jpへ

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