「五輪で福島を忘れさせようと…原子力緊急事態は今も」 小出裕章さんに聞く

2020年6月30日 14時00分

太陽光発電を備えた小さな家に住み、家庭菜園で野菜を育てているという小出裕章さん=長野県松本市で

 東京電力福島第一原発でたまり続ける放射性物質トリチウムを含む水の海洋放出に向けた手続きが進められている。経済産業省は30日、消費者団体などから意見聴取する。福島第一の事故前から原発の危険性を唱えていた京都大原子炉実験所(現・複合原子力科学研究所)元助教の小出裕章さん(70)にどう考えるかを聞いた。 (宮尾幹成)

◆海洋放出は間違い

 ―処理水を巡って政府の小委員会は2月に「海洋放出が確実」と提言。政府は各種団体や福島県内の首長らから意見を聞いている。

 人間に放射能を無毒化する力はないと認めねばならない。自然にもその力はない。自然に浄化作用がないものを環境に捨てるのは間違っている。
 ―政府や東電はなぜ、海洋放出にこだわると思うか。
 1~3号機の溶けた炉心から出たトリチウムは200トン。事故がなければ、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場から海に捨てるはずだったものだ。核燃料サイクル計画では、もともと毎年800トンのトリチウムを六ケ所村で流す予定だった。福島の200トンで大騒ぎしていたら、日本の原子力の総体が動かなくなる。彼らにとっては海洋放出以外の選択肢は絶対にないのだろう。

◆原子力村の常とう手段

 ―東京五輪が来年に延期になった。これまで、福島の事故が収束しない中での開催を批判してきた。
 2011年3月11日に発令された「原子力緊急事態宣言」は今も解除されていない。強制避難させられた地域の外側にも、本来なら放射線管理区域にしなければいけない汚染地帯が残る。
 不都合なことを忘れさせようとする時、昔から取られてきた手段は、お祭り騒ぎに人々を引きずり込むことだ。原子力ムラにとって、それが東京五輪なのだろう。福島を忘れさせるための五輪の利用には徹底的に抵抗していく。

◆延長せず40年でやめるのが賢明

 ―日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)は原則40年の運転期間の延長が認められ、再稼働に向けた動きが進む。
 古い原発で相対的に危険が多いのは争えない事実だ。ポンプや配管などの部品は不具合があれば取り換えられるが、原子炉圧力容器だけは交換できない。その寿命は40年くらいだろうということで始めているのだから、40年でやめるのが賢明な選択だ。

 こいで・ひろあき 1949年、東京都台東区生まれ。東北大大学院工学研究科修士課程修了(原子核工学)後、京都大原子炉実験所(現・複合原子力科学研究所)に入所。41年にわたり助教を務め、原子力の危険性を世に問う研究に取り組み、2015年に定年退職。現在は長野県松本市で、太陽光発電や野菜の自家栽培による自給自足の生活を送る。

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