希望すれば結婚前の姓を使える「選択的夫婦別姓制度」を導入する議論が自民党内で再開された。法務省の法制審議会が答申した制度導入の民法改正案の国会提出を拒んでから約30年。野党による提出法案の審議入りを見据えての動きだが、党内の賛成派と慎重派の主張は平行線のまま。自民の議論の行方が注目される。長年、制度導入を求めてきた野田聖子元総務相に現状を聞いた。(坂田奈央)
◆「夫婦別姓を『ふしだら』だという議員がいた」
1993年に初当選した野田氏は当時、「自民唯一の女性衆院議員」として国会デビューした。
法制審が選択的夫婦別姓の導入を含む民法改正案を答申したのは、その3年後の1996年2月。自民党の反対で議論は棚上げされたが、野田氏は「ライフワーク」として党内外で制度導入に取り組んできた。
「(当時も)『いいんじゃないか』と言う大物議員もいて、私は下っ端で走り回った。一方で夫婦が別の名字を名乗ることを『ふしだら』だという議員がいた。以降、『これ以上にやることがある』『女の問題だしマイノリティーだし時間を割けるか』というのが党内の雰囲気で、自民だけが倉庫の隅にしまってしまった」と悔やむ。
昨年10月の衆院選で自公は少数与党に転落。同時に衆院の女性議員は過去最多の73人になった。世論を後押しに野党各党でも議論が進む。「少数でも与党なのだからまずは成立する法案を出さなきゃいけない。通称使用など野党が応じない法案で出す意味もない。与党の矜持(きょうじ)があるなら、責任を持って法制審が答申した政府原案を出せばいい」と野田氏。
◆通称使用の機会は増えてきたが…
選択的夫婦別姓制度の導入を求める推進派に対し、党内の慎重派は、旧姓の通称使用を広く認めることで夫婦同姓の不都合を解消できると訴える。「30年前は『夫と妻が別々の名字を名乗るなんて何事だ』というのが慎重と言われる人たちの主張だった。それが今は『(通称使用で)別の名字を名乗ってもいい』という前提になった。意外と知られていないけれどそこは大きなこと」と指摘する。
この間の社会の変化を受け、夫婦が別の名字を名乗ることは「相当コンセンサスを得られている」とみる。ただ、この現状は「あくまで選択的夫婦別姓制度ができるまでの暫定措置だ」とくぎを刺す。
実際、「通称使用」案は、約30年前の法制審が却下している。制度の導入が実現しないなか「『せめて通称で(旧姓を)名乗りたい』『そうしないと心が壊れる』という人がいて、自然発生的にだんだん広がってきた」と野田氏。通称使用の機会は増えてきたが、同時に混乱や弊害も表面化した。
経団連が昨年6月、制度導入を求める提言を初めて公表したのも、女性活躍が進めば進むほどビジネスの現場でトラブルを招く「リスク」となっているからだ。具体的に「多くの金融機関で、ビジネスネームで口座やクレジットカードをつくることができない」「海外ではパスポートと名刺の通称名が違うと公的施設や民間施設に入館できないことがある」などの事例が列挙された。
野田氏は「企業に(通称使用対応の)強制はできない。お金をかけてシステム改修をしたとしても経営環境次第で『維持できない』となりかねない。すごく不安定要素が強い」と指摘する。
◆「安倍晋三氏と岸信夫氏はご兄弟だが、不幸だとは…」
反対の主な理由には、親子で姓が異なると「家族の一体感が失われる」との指摘がある。野田氏は「離婚のイメージで思考が止まっているのではないか」と一蹴。「安倍晋三氏と岸信夫氏はご兄弟だが不幸だとは思えなかった。不幸なのは離婚であって名字が違うことじゃない」と主張する。
何よりも「人権や人生の問題」と力を込める。経団連も当事者の不都合解消に加え、すべての人のアイデンティティーを守る観点で必要だと訴える。石破茂首相が今年1月のインターネット番組で「『折衷案』もありうべしと思う」と発言しているが「(社会保険料のような)金目の話じゃない。家族とか家庭という個々に違う。そこはきちんと議論しなければならない」と反論する。
「自民党が腹を決めれば済むだけ。今までは別姓に反対してたら...
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