「鄧小平氏の約束『50年不変』の反故、認められない」香港民主化の父・李柱銘氏

2020年7月1日 05時50分

中国政府の法制定は「香港の憲法を壊す」と憤る李柱銘氏

【上海=白山泉】「香港国家安全維持法」の成立をめぐり、「香港民主化の父」と呼ばれる民主派の重鎮、李柱銘(り・ちゅうめい、英語名マーティン・リー)氏(82)は本紙の取材に「香港の一国二制度は、中国が国際社会と『50年不変』を約束したものだ。返還から23年での破壊は受け入れられない」と憤った。香港返還前から民主化運動に関わってきた李氏は「今後、香港での民主化運動はできなくなる」と悲観的な考えも示した。
 同法成立に先立つ29日、インターネットを通じた取材に答えた。

◆逮捕で中国本土に連行も

 李氏は、同法によって「香港人による香港統治ではなく、中国政府による香港統治になる」と言い切り、さらに「逮捕されれば中国本土に連行されることもありうる。外国人も例外ではない」とも話した。
 英国から中国への香港返還の過程をつぶさに見た李氏は「(中国の最高指導者)故鄧小平氏が、香港の高度な自治に基づく一国二制度の『50年不変』を国際社会と約束しなければ、そもそも返還は実現しなかった」と指摘する。

◆「約束」は国連にも登録


「香港民主主義の父」と呼ばれる李柱銘氏

 中英間の返還交渉では、租借期限を1997年に迎える新界に加え、英国に永久割譲されていた香港島と九竜半島も合わせて返還されるかが焦点となった。李氏は「鄧氏は英国が香港から手を引く代わりに、50年間は中国も香港に関知しないと約束し、香港が一括返還された。中国政府は約束を守る義務がある」と話す。「約束」は中英共同宣言(84年)として国連にも登録されている。
 しかし国家安全維持法はその約束された高度な自治を踏みにじる。「今の中国政府は返還からわずか23年で約束を破った。受け入れられない」。李氏は87年に鄧氏と面会した際に「50年で足りなければ追加してもいいと言っていた。香港が中国に合わせるのではなく、中国が香港に追いつけるようにするつもりだった」と振り返る。

◆香港人の自由と人権を守る

 李氏は英国領の香港で生まれ育った。「中高生のころは返還なんて考えたこともない。当時はサッカーに夢中だった」と振り返る。「でも今は中高生が命懸けでデモをしている。中国政府が約束を守らないから、必死に香港を守ろうとしている」とたたえた。
 今年4月には李氏自身も昨年の抗議デモに関与した疑いで逮捕された。同法施行後は外国メディアの取材を受けることも「外国勢力との結託」として罪に問われる可能性もあるが、「香港人の自由と人権が守られるよう見守る責任がある。私は逮捕されてもかまわない覚悟だ」と強調した。

李柱銘 1938年6月、英国領時代の香港生まれ。香港大を卒業後、英国と香港で弁護士資格を取得し、79年には英国王室の顧問弁護士に。80~83年、香港の弁護士でつくる香港大律師公会の主席を務め、85年に香港基本法(憲法)の起草委員に任命された。89年の天安門事件で中国政府を批判したことで除名。94年に民主派政党の民主党を創設し、98年~2008年に立法会議員を務めた。香港の民主化を目指して活動を続け、米国の弁護士会などから人権に関する賞を多数受賞している。

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