アスリート支援に新たな形「スポーツギフティング」  ネットを通して選手に「10円」から寄付可能

2020年7月1日 05時50分

スポーツギフティングサービスについて話す高梨沙羅=Unlim提供


 応援するアスリートを低額で経済的に支援できる新たな試み「スポーツギフティングサービス/Unlim(アンリム)」が今年の2月からインターネット上で始まっている。ファンは寄付という形で10円からアスリートを支援でき、選手にとってもクラウドファンディングなどと比べて手軽に活動資金が調達できる仕組み。新型コロナウイルス禍でスポーツ界からスポンサーが離れていく恐れもある中、ファンによる新たなスポーツの応援手段となりそうだ。(平松功嗣、唐沢裕亮、磯部旭弘)

◆10円~30万円までファン自ら設定

 サービスはアスリートへの助成や活動環境の整備に取り組む非営利の「アスリートフラッグ財団」が手掛け、インターネットサービスの「ミクシィ」が運営。ファンは10円~30万円の範囲で自ら金額を設定し、サービスに登録した選手に寄付できる。実務経費などを除いた67~83%がアスリートに渡り、3%はスポーツ振興団体へも寄付される。
 すでにノルディックスキージャンプ女子の高梨沙羅(クラレ)やバドミントン女子ダブルスの福島由紀、広田彩花組(丸杉Bluvic)、サッカーJ1のFC東京、バスケットボールB1の千葉など50以上の個人とチームが登録し、支援を募っている。
 同じように広く資金を調達できるクラウドファンディングでは、一度に集められる金額は大きいが、返礼を用意したり、使途を具体的に決めて目標金額を設定したり、自ら広報・宣伝しないといけなかったりと、アスリートにとってハードルが高い面がある。アンリムでは選手の手間が少なく、ファンの側も少額寄付が可能なために、より気軽に支援できるのが強みだ。

◆試合中だけでなく常時支援受け付け

 こうした仕組みは、ストリートミュージシャンや大道芸人のパフォーマンスに対して小箱に少額を投げ入れる行為になぞらえて「投げ銭」と呼ばれる。一方で、アンリムでは試合中だけでなく常時、支援を受け付けている。
 アスリートは受け取った支援を自身の活動費だけでなく、地域貢献などに使う例もあるという。高梨は競技振興を目的に協力を呼びかけていて「(経済的な)サポート体制がしっかりすることで(競技)人口が増え、注目度が増して投資が増えたりして、競技のレベルも上がる」とアンリムのサイトで説明する。ミクシィの担当者は「アスリートが知名度を生かして、地域貢献や競技振興の旗印になるのが理想」と話す。
 財団に参加している元陸上選手の為末大さんはサイトで「これからはたくさんの人が少しずつ支える世界になっていく」とコメント。大きな資金を持つ企業やスポンサーだけに頼るのではなく、大勢のファンがアスリートを支援する新たなスタイルを目指している。

◆卓球・森薗政崇選手「高校生向けの強化の場を」

 卓球の全日本選手権混合ダブルス覇者の森薗政崇(BOBSON)もアンリムに登録したアスリートの一人。届いた支援を活用して、高校生を強化する場を設ける取り組みを始めた。夏の全国高校総体(インターハイ)中止の影響を受けた選手らを思いやり、「エネルギーをぶつける場をみんなでつくっていきたい」と語る。

支援を活用し、高校生の強化の場を設ける取り組みを始めた森薗政崇=東京都内で

 コロナ禍による自粛期間中には高校生向けにオンラインで講演。インターハイ中止に戸惑う現場の声に心を痛め、選手のレベルアップを目指す指導者の要望にも耳を傾けた。強化の形式については合宿や練習会などを模索している段階だというが、「(届けられた支援は)高校生に還元して得られた効果を発信したい」と力を込める。

◆Jリーグでは浦和が実施、鹿島も積極的

 コロナ禍で当面は無観客試合や観客の人数制限が続き、入場料収入の大幅減少などが予想されるJリーグ。J1浦和は無観客となる7月4日のリーグ再開初戦、横浜M戦から「投げ銭」を導入する方針だ。6月13日のJ2町田との練習試合で試験運用し、一定の手応えを得たことから公式戦での導入に踏み切ったという。
 浦和によると、投げ銭はファンやサポーターが動画配信サービスDAZN(ダ・ゾーン)の中継映像を見ながら専用のアプリを使って行えるよう計画している。6月の試験導入の際は最低金額を500円に設定。1口10万円の大口の投げ銭もあったという。
 J1屈指のビッグクラブの浦和も本年度は最悪で10億円前後の赤字を想定する。立花洋一社長は「今までやれていなかった新しい取り組みをやってみようと思う」と危機に手をこまねいてはいない。
 J1クラブで以前から積極的だったのは鹿島。トップを務めるのは、フリーマーケットアプリ大手メルカリ会長の小泉文明社長で、ITベンチャー出身者らしく、4月の段階で無観客試合を想定して投げ銭のアイデアを披露した。「無観客試合でも入場料収入がゼロにならないような仕組みを準備したい」と説明。オンラインで試合中に好プレーをした選手やクラブにファンが金銭で支援できる仕組みが、徐々にJリーグに浸透しつつある。

◆「投げ銭」さまざまなスポーツで広がる

 さまざまなスポーツで「投げ銭」導入の動きは広がっている。プロ野球の阪神はスポーツ特化型ギフティングサービス「エンゲート」に参画した。このサービスにはすでに、JリーグやバスケットボールBリーグのチームなどが参画している。フェンシングでも9月に無観客で実施する全日本選手権決勝で、投げ銭のシステムを導入するとしている。

UnlimのQRコード

関連キーワード

PR情報

タイムラインの新着

記事一覧