強制不妊の賠償請求を棄却 東京地裁判決、違憲性は認める

2020年7月1日 05時50分

旧優生保護法下での強制不妊手術を巡る訴訟の判決で請求が棄却され、「不当判決」の垂れ幕を掲げる原告側弁護士=30日、東京・霞が関の東京地裁前で


 旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強いられたとして、東京都内の男性(77)が国に3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は30日、男性への手術は「憲法が保護する私生活上の自由を侵害した」として違憲性を認めた。旧法自体が違憲かには言及しなかった。賠償請求については、手術から20年が経過していることから、請求する権利が消滅したとして棄却した。原告側は控訴する方針。

◆昨年5月の仙台地裁に続き2件目の判決

 同様の訴訟は大阪、静岡など全国八地裁と仙台高裁で計24人が争っている。判決が出たのは、昨年5月の仙台地裁判決に続き2件目。
 男性は、14歳だった57年の不妊手術の被害が今も続いているとして、不法行為から20年が経過すると損害賠償請求権が失われるとする民法の「除斥期間」は適用されないと主張。国会には被害回復を図るための立法を怠った不法行為があるとも訴えた。
 伊藤正晴裁判長は判決理由で、国は男性の手術に対して賠償責任を負うとし、「手術で子を持つかどうかを決める余地が強制的に奪われた」と、憲法一三条で保護されている原告の自由を侵害したと述べた。
 その上で、「不法行為があったのは(63年前の)57年の手術時。提訴した2018年5月の時点で、損害賠償請求権は消滅している」と判断。男性は手術後も被害は続いているとして除斥期間の起算点を争ったが、伊藤裁判長は「どんなに遅くとも、障害者差別を正面から認める形で旧法が改正された1996年時点で提訴が困難だったとは言えない」と述べ、いずれにしても男性に賠償請求権はないと判断した。

◆国会の不作為「明白だったと言えない」

 国会の立法不作為については「法改正後にさらに補償や被害回復の立法をすることが、必要不可欠で明白だったとは言えない」として認めなかった。
 昨年5月の仙台地裁判決は、旧法が定める不妊手術の規定を「憲法に違反し、無効」と判断していた。
 厚生労働省は「国の主張が認められたものと認識している」とコメントした。
             ◇

◆旧優生保護法とは

 ナチス・ドイツの断種法の考えを取り入れた国民優生法が前身。1948年、「不良な子孫の出生防止」を目的に議員立法で制定され、知的障害や遺伝子疾患などを理由にした不妊手術を認めた。国際的な批判を背景に96年、障害者差別に当たる条文を削除して母体保護法に改正されるまで、約2万5000人が手術を受け、うち約1万6500人が強制だったとされる。昨年4月、被害者に一時金320万円を一律支給する法律が施行された。前文は「反省とおわび」を表したが、主体が「国」ではなく「我々」とあいまいにされた。

関連キーワード

PR情報

社会の最新ニュース

記事一覧