周庭氏「絶望の中でも強く生きる」 香港安全法の成立で民主派活動の危機

2020年7月1日 05時50分
 「香港国家安全維持法」の成立により、香港は1997年の中国返還以来となる歴史的な転換点を迎えた。香港への中国政府の強権的な直接介入が可能になり、施行を前に複数の民主派団体が活動中止の表明に追い込まれた。昨年から続く抗議活動も事実上、継続困難な状況で、共産党独裁の中で何とか保たれてきた香港の自由は、瀕死(ひんし)の危機に直面している。(上海・白山泉、北京・中沢穣)

30日、香港中心部の商業施設で国家安全維持法に抗議する人々=AP

 ◆「第2の返還」喜ぶ親中派

 「一国二制度を安定的に永続させる法律的な基礎を得て、香港は歴史の新たな起点に立った」。中国国営新華社は30日、同法の成立を「第2の返還」と喜ぶ香港親中派の声を伝えた。
 香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は30日、国連人権理事会にビデオメッセージを寄せ、「昨年6月からの暴力行為は外国勢力に扇動され、テロ行為のようだった」と同法の必要性をあらためて主張した。中国政府の香港マカオ事務弁公室も声明で「中国政府と香港政府の関係部門は徹底的に法を執行し、国家安全を脅かす活動を震え上がらせ、法律の威力を見せつける」と強調した。

30日、香港で記者会見する林鄭月娥行政長官(AP=共同)


 ◆違反者に懸賞金100万香港ドル

 林鄭氏は同日夜の会見で法案制定を歓迎し、執行に向けた組織づくりを急ぐ考えを示した。香港メディアによると、香港警察が同法に基づいて新設する国家安全部門には150人の警官を配備する計画だ。ほかにも香港政府が新設する国家安全維持委員会の人事などが早くも報じられている。
 また、親中派の梁振英(りょう・しんえい)前行政長官は30日、同法違反者の逮捕を効率的に行うため、最高で100万香港ドル(約1400万円)の懸賞金を出すとネット上で明らかにした。懸賞金は同法違反に関する情報提供に支払われ、市民同士が監視の目を光らせる中国式の統治が香港にも浸透する懸念がある。
 一方、7月1日の香港返還記念日に毎年行われてきたデモは、今年は新型コロナウイルスを名目に許可されなかった。デモ強行を呼び掛ける団体の関係者は「1日はこれまでと同じように声を上げよう。(同法に)対抗する日となることを期待している」と必死に訴えた。警察は約4000人を動員して警戒する方針を明らかにしており、参加者は昨年の約50万人から大幅に減るとみられる。

 ◆相次ぐ民主派団体の解散

民主活動家の周庭氏=2019年9月、香港で

 30日朝に同法成立が報じられると、民主活動家の黄之鋒氏や周庭氏らが、所属する民主派団体「香港衆志」から脱退する意向を相次いで明らかにし、午後には同団体が解散を表明した。ほかにも香港独立派の団体や学生団体が香港での活動休止を次々に表明した。
 黄氏はネット上で「悪法が成立した今、香港で民主化を求めることは命に関わる」と同法に基づく逮捕への懸念が脱退の理由だと明かし、周氏は「絶望の中でも強く生きないといけない」と悲愴感をにじませた。
 黄氏らはこれまで米国などに支援を求めてきたが、同法は「外国勢力との結託」も犯罪行為と規定する。黄氏は「今後は個人として信念を実践する」とも明かしたが、従来のような活動は難しいとみられる。
 香港情勢に詳しい亜細亜大の遊川和郎教授は「1989年の(学生らが中国の民主化を求めた)天安門事件では、中国政府は軍を投入したが、今回は法を繰り出して自由を求める香港市民を鎮圧した。30年で独裁のツールは武力から法に変わり、法による弾圧でデモを強制終了に持ち込んだ」と指摘した。

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