香港安全法が成立 「一国二制度」の形骸化が決定的に
2020年7月1日 05時50分
【北京=坪井千隼】中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会の会議は30日、「香港国家安全維持法」案を全会一致で可決、成立した。国営新華社が伝えた。中国政府が香港の行政や司法に直接介入することを可能にする内容で、1997年の中国返還以来、香港の高度な自治を支えてきた「一国二制度」の形骸化は決定的となった。
◆最高刑は終身刑
香港政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官は30日、同法が「本日中に施行される」との声明を出した。同法は国家分裂や、政権転覆、テロ行為、外国勢力と結託して国家安全に危害を加えるといった4類型の犯罪を規定。香港メディアによると、最高刑は終身刑となる。
中国政府は香港の返還時に、一国二制度の50年間の堅持を国際社会に向けて約束した経緯があり、国際的な約束をほごにする同法成立に批判が強まるのは必至だ。すでに日本政府は「遺憾」を表明。米国は香港に認めた特別な地位を見直す制裁措置を発表した。
◆1カ月強のスピード審議
中国共産党最高指導部の栗戦書(りつ・せんしょ)全人代常務委員長は「(同法は)国家の安全と香港の長期的な繁栄を実現するものだ」と主張した。林鄭氏は「一国二制度の下での高度な自治や、言論、集会の自由に影響を与えない」と訴えた。同法は、香港で続く反香港政府・反中国を訴える抗議活動の取り締まりを主な目的とし、制定方針が5月21日に発表されてから1カ月強のスピード審議で成立した。
香港では同法施行前から、複数の民主派団体が活動休止などの声明を出し、香港独立を掲げる政治団体「香港民族陣線」も香港本部の解散を公表するなど、早くも影響が広がっている。
法案の概要によると、中国政府が出先機関「香港国家安全維持公署」を新設▽香港政府が新設する「国家安全維持委員会」に中国政府が顧問を派遣▽「特別な状況」では中国政府の組織が香港で法執行|なども盛り込まれた。
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