<支え合う 介護保険20年>退院推奨も乏しい支援 認知症夫を介護 妻が困惑   

2020年7月1日 07時22分

認知症の夫が入院中の女性は、長年在宅介護を担い、日記も残してきた=岐阜県内で

 認知症の夫の退院を病院から推奨されているが、在宅介護をする自信はなく、入所施設も見つからない−。老老介護を担ってきた読者の女性からそんな悩みの投書が届いた。国は医療の場である病院から、患者を在宅へと移行させようとしている中、退院時の支援の難しさが浮き彫りになっている。 (細川暁子)
 「退院後、夫はどこに行けばいいのか」。岐阜県の女性(72)は頭を抱える。
 八年前に認知症と診断された夫(82)は症状がひどく、昨年十二月から県内の精神科の病院に入院。今年三月下旬に病院のソーシャルワーカーから電話で、退院を勧められた。だが、退院後どうしたらいいのか、説明はなく、ソーシャルワーカーが夫の在宅介護の計画をするケアマネジャー(ケアマネ)に連絡しても、つながらないという。
 夫は要介護4。入院前は、週二回のデイサービスと、定期的な訪問診療を受けながら、女性が一人で介護していた。昨夏から徘徊(はいかい)の症状が出て、女性が追い掛けて連れ戻す日々。医師から処方された抗精神病薬を飲むと、今度は呼び掛けても反応しなくなった。階段の上り下りや服の脱ぎ着もできず、トイレの排せつも女性が手伝うように。体重七五キロの夫の体を支えることは大きな負担だった。
 退院後に在宅介護を続ける自信はなく、女性からケアマネに相談。ケアマネは認知症の人が暮らすグループホームと特別養護老人ホームを提案し、探してくれたが、どこもいっぱいで入れず、あとは女性が自分で探して申し込むように言われたという。
 女性は県内外の特養に電話で入所を相談したが、空きがなく、「一年待ち」のところも。有料老人ホームにも範囲を広げたものの、すぐに入れるところは、費用は月に二十五万円。夫の年金は月十五万円ほどのため「高すぎて預けるのは無理」と嘆く。

◆医療機関からケアマネへ 情報共有し地域連携を

 名古屋市を中心に活動するケアマネの大河内章三さん(35)によると、介護が必要な高齢者が退院する場合、本来は、在宅や施設での介護への移行に向け、病院のソーシャルワーカーや看護師らが連携。患者のケアマネや介護事業所と連絡をとりサポートする。
 国は在宅介護への移行がスムーズに進むよう、専従職員を配置し退院支援を行う医療機関には、診療報酬を加算。多くの病院には退院支援を行う「地域医療連携室」などが設置されている。
 だが、大河内さんによると、実際にはソーシャルワーカーが医師や看護師らと話し合う機会を設けることが難しく、十分な支援が行えていないケースもあると指摘する。
 医療機関と、退院後の生活を支えるケアマネの情報共有も課題だ。在宅介護中の介護計画を立てていたケアマネは、患者が入院中は、介護サービスが提供されないため連絡が途絶えがちになる。
 大河内さんは「ケアマネは地域での患者や家族の介護の様子を誰よりも把握しており、退院後の施設探しなどにも積極的に関わる必要がある」と指摘。「認知症の人と家族の会岐阜県支部」代表の小森薫さん(60)も「ソーシャルワーカーとケアマネが情報共有して在宅介護の可能性を探ったり、施設を探したりする必要がある」と話す。
 こうした状況を受け、国は一八年度の介護報酬の改定で、病院などが行う退院支援の会議にケアマネが参加した場合の加算を大幅に増加。ただ、現在はコロナの影響で病院も介護現場も余裕がなく、患者や家族が孤立しがちだ。十分な支援を受けられないような場合、大河内さんは「地域包括支援センターに相談するのも一つの手」だとアドバイスする。
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