日ごろのつながり命救う 台風19号の土石流発生前に 老人ホームに避難呼び掛け

2020年7月1日 07時30分

土砂崩れが起こった山の方向を指さす内田肇さん=小山町小山で

 昨秋の台風19号接近時に小山町で土石流が起きた際、発生直前に近所の高齢者施設に避難を促した同町小山の内田肇さん(67)が、国土交通大臣表彰を受けた。内田さんは自宅の横を走る水路に異変を感じ、施設に駆け込んで危機を伝えた。土石流は施設の窓ガラスを突き破って一階に流れ込んだが、全入所者が避難を終えた直後で、けが人はなかった。(佐野周平)
 昨年十月十二日午後七時半ごろ。内田さんは深さ二メートルほどの水路に土砂がたまり、水があふれ出ているのに気付いた。二十五年近く住む中で、初めて見る光景だった。
 内田さんは元区長で、自宅前にある特別養護老人ホーム「平成の杜(もり)」の防災訓練を見学したことがあり、足腰の不自由な入所者が多いことを知っていた。
 「避難誘導も大変だろうから、念のため早めに伝えておこうと思った。まさか土石流が起こるなんて思いもしなかった。職員とは日ごろから付き合いがあり、伝えやすかった面もある」
 当時、入所者の半分に当たる三十人余りが、施設一階の山側にある食堂や居室にいた。内田さんの連絡を受け、施設職員は入所者を山側から離れた場所に誘導。寝たきりや車いすの利用者が多く、避難に三十分近くかかった。
 全員が山側を離れた直後、黒い土砂が窓ガラスを突き破って食堂に流入した。一階床面から一・五メートルほどの高さまで土砂が押し寄せた場所もあった。施設担当者は「夜でカーテンを閉めていたので、外の異変に気付かなかった。内田さんには本当に助けられた」と感謝する。
 国交省は土砂災害防止に貢献した個人や団体を大臣表彰しており、個人の部で県内から選ばれるのは十四年ぶりという。六月下旬に町役場で表彰伝達式があった。内田さんは「表彰されるような、大それたことをしたとは思っていない。入所者にけが人がいなかったと後で知り、ホッとした」と話した。

土石流が施設内に押し寄せ、車いすなどが埋まった「平成の杜」=小山町で、同町提供


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