ベラルーシ大統領選 「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ氏の6選なるか 

2020年7月1日 13時59分

6月24日、モスクワ軍事パレードに参加するルカシェンコ大統領(中央)と息子ニコライ君(右)=モスクワで(ベラルーシ大統領府サイトから)

 旧ソ連ベラルーシの大統領選が8月9日に行われる。26年もの長期政権が続く現職ルカシェンコ氏(65)が6選を果たすかが焦点。ロシアと欧州連合(EU)諸国のはざまにあり、地政学的に重要な同国で政変の可能性はあるのか。 (モスクワ・小柳悠志)
 6月24日、ロシア・モスクワで開かれた対ナチス・ドイツの戦勝75年記念軍事パレード。来賓で招かれたルカシェンコ氏の隣に座ったのが息子ニコライ君(15)。ルカシェンコ氏が将来、後継者に据えるとの観測がロシアメディアによって伝えられている。
 ルカシェンコ氏は1994年に初当選。憲法改正で多選を可能にしたり、有力な対立候補を拘束したりするなどの強権体制を敷き「欧州最後の独裁者」と呼ばれてきた。
 「公正な選挙があればルカシェンコは落選する。本人も不人気を自覚しているから政敵を排除したがる」。首都ミンスクの政治学者バレリー・カルバレビッチ氏はこう語る。春以降、新型コロナウイルスが流行しても感染対策を取らないルカシェンコ氏に対し、抗議デモも起きた。
 ルカシェンコ氏は従来からウクライナで2014年に起きたような親西欧派の政変を懸念。最近も「わが国で『(ウクライナ型の)革命』は起きない」と語っている。ロシアもウクライナの二の舞いを避けたいルカシェンコ氏とは思惑が完全に一致していた。
 一方で今回、注目されているのは、有力対抗馬と目されていた人物がロシアと関係の深い人物であることだ。ロシアの政府系ガスプロム傘下の銀行「ベルガスプロムバンク」元頭取ビクトル・ババリコ氏だ。
 ベラルーシの捜査当局は「ベルガスプロムバンク」に対して脱税などの容疑で捜査を行い、18日にはババリコ氏を拘束した。出馬できるかは不透明だ。出馬表明していた人気ブロガーで実業家のセルゲイ・チハノフスキー氏も5月に逮捕されるなど、反体制派市民ら計300人以上が6月末までに拘束された。
 ルカシェンコ氏は25日、「(反体制派の)黒幕がいる。連中はポーランドに居住していたり、ロシアからも攻撃したりしている」と言い、インターネットを利用するなどの方法でベラルーシへの選挙介入が行われているとの強い懸念を表明。従来と違い、ロシアへの警戒感を示した。
 支持率が低下しているルカシェンコ氏は従来のように西側だけでなく、ロシアからも「攻撃」を仕掛けられるとの理由を掲げる。
 両国は1999年には政治・経済などの統合を目指す連合国家創設の条約に調印。その後、実効的な統合を目指すロシアに対し、ルカシェンコ氏は国家主権を手放さない構えだ。
 ただベラルーシは経済面で対ロ依存度が高い。ルカシェンコ氏は28日の演説で「ベラルーシはロシアに残された唯一の同盟国だ」と両国の縁を強調し、決定的な関係悪化は避ける考えだ。

◆大統領こだわりの施策「国民の美の追求」

国立美の学校の行事でポーズを取る学生=同校提供

 ルカシェンコ大統領の独特の施策として、しばしば外国メディアで言及されるのが国民の美の追求だ。「ベラルーシにも美人はいる」と主張し、外国人モデルが写った広告を撤去させ、ベラルーシ人モデルを使うよう命じた逸話が有名だ。
 大統領令でモデル養成のための「国立美の学校」も設立。プロ養成枠は国が学費を負担し、卒業生は国外でも活躍する。最近は東アジアで引き合いが強く、国が重視する中国との関係強化の一翼も担っている。
 同校のサイトは、過去のミス・ベラルーシの8割超は髪が黒や茶色と記載。ベラルーシ国民の大半は東スラブ系で、ロシアやウクライナと民族的には極めて近い。

 ベラルーシ 共和国制。人口約950万、面積は日本の半分。ベラルーシ語とロシア語が公用語。第2次大戦ではナチス・ドイツのソ連侵攻などで人口の4分の1を失った。ソ連のチェルノブイリの原発事故による最大の汚染被害国としても知られる。


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