同性カップル都営住宅入れず LGBT差別禁止条例あるのに<都知事選・現場から>

2020年7月1日 13時59分

パートナーの女性(左)と暮らす加沢世子さん。「同性カップルも家族として認めてほしい」と訴える

 東京五輪・パラリンピックで「多様性と調和」を基本コンセプトに掲げる東京都は2018年、都道府県で初めて性自認や性的指向による差別を禁じた人権尊重条例を制定した。だが、LGBTなどの性的少数者への差別解消をうたいながら、都営住宅に同性カップルが入居できないなどの矛盾も。当事者や専門家から「実効性が乏しい」との指摘が上がっている。(奥野斐)
 「私たちは家族として認められていないので、ありとあらゆることで壁にぶつかる。都営住宅に入る選択肢がないのもその一つ」。東京都小平市で同い年の女性パートナーと暮らす加沢世子さん(45)は話した。
 同居して13年目。引っ越しの際に都営住宅を探したこともあったが、同性パートナーとは入居できないと分かり、あきらめた。
 最近ではクレジットカードの家族カードの申請で壁を感じた。自治体が同性カップルを認めた証しである「パートナーシップ宣誓受領証」を求められたが、小平市に同様の制度がないため、二人の関係性や家族としての取り決めを記した公正証書を示してようやく審査が通った。「夫婦だったらこんな面倒なことはない。都にパートナーシップ制度があれば」。都道府県でも既に茨城県と大阪府が制度を導入している。
 都条例は、五輪の開催都市ゆえに設けられた。14年ソチ冬季五輪の際、開催国ロシアで同性愛宣伝禁止法が成立したことなどに欧米各国の首脳が反発し、開会式を欠席。同年、五輪憲章に性的指向による差別禁止が追加された。
 条例では「都、都民、事業者は、性自認や性的指向を理由とする不当な差別的取り扱いをしてはならない」と明記。しかし「基本は啓発や普及。理解を進めるのが大前提」(都人権部)で、相談窓口はあるものの、行政による救済や処分の規定はない。
 都営住宅の同性パートナー入居について、担当課は「検討中」と回答。導入が広がるパートナーシップ制度は、今年3月の都議会総務委員会で、都人権部長が「婚姻関係のあり方そのものにかかわるものであり、広範な国民的議論が必要な課題」と繰り返し、消極的な姿勢を見せた。
 レズビアンらを支援するNPO法人「coLLabo(コラボ)」理事として10年以上活動する加沢さん。近年LGBTへの認知度が高まる中、制度の導入が進んで当事者の困り事が可視化されてきたと感じる。「東京が変われば影響は大きい。LGBTに関する教育も変わってほしい。当事者の声ももっと聞いて」
 5日投開票の都知事選では、新人候補が都営住宅の同性パートナーの入居や「性の多様性」教育の推進を訴える。別の候補も同性パートナーシップ条例の制定を掲げる。
 差別禁止法制に詳しい労働政策研究・研修機構の内藤忍副主任研究員は「啓発と相談対応は重要だが、それだけでは条例の差別禁止規定が生かされない。苦情の申し立てができ、行政による指導や是正命令がなされる仕組みが必要だ」と強調した。

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