<どうする相続>問題に応じ専門家選ぼう 手数料だけで決めるのはNG

2020年7月2日 07時57分

 両親や配偶者が亡くなった時などに、突然始まる相続の手続き。めったにない上に煩雑とくれば、専門家に任せたいと考える人も多いだろう。ただ相続といっても中身はさまざま。手数料だけでなく、依頼する専門家の実績や得意分野なども確認し、円満、円滑な相続につなげたい。 (砂本紅年)
 「初めての相続。どうしたらいいか分からない」。名古屋市の四十代の会社員正樹さん(仮名)は五月中旬、八十代の父を病気で亡くした。遺産は預貯金など金融資産約八千万円に、自宅土地などを含めた計一億二千万円ほど。相続人は正樹さんと母の二人だ。
 父の葬儀を行った葬儀社が提携する行政書士法人の無料相談を受けたところ、遺産の調査や不動産登記申請、税務申告など必要な手続きの代行手数料で計百万円近くになるかもと言われた。正樹さんは「面倒なので丸投げしたいが、妥当な金額か、ほかと比べた方がいいのかも分からない」と決めかねている。
 専門家でつくる日本相続学会会長でファイナンシャルプランナー(FP)の伊藤久夫さん(62)によると、相続の手続きは自分でもできるケースと、専門家に依頼した方が無難なケースがある。例えば、不動産が自宅だけで、登記を行う法務局へ二〜三回通う余裕があれば、自分で手続きすることも可能。金融機関の名義変更なども口座数が限られていて戸籍謄本や遺産分割協議書など必要書類をそろえれば自力でできる。
 ただ、農地など不動産が複数ある場合や、相続税の課税対象者など手続きが煩雑な場合は、司法書士や税理士などの有資格者のほか、有資格者らをつないで調整する行政書士やFP、不動産、金融関係者ら専門家への依頼を検討することを勧める。専門家にはそれぞれ得意分野があり、伊藤さんは「相続人が直面する問題に合った専門家選びを。手数料が心配な場合は、複数の専門家から相見積もりをとるのが基本」と話す。
 正樹さんの場合、一人っ子でもめ事もない。一方、遺産総額などから相続税の支払いが必要となるため、「税務申告ができる税理士から選んでみてもいいのでは」とアドバイスする。
 相続税額の算出は、亡くなった人の遺産をすべて金銭的な価値で評価することから始まる。難しいのは土地の評価。価値基準が明確な金融資産に対し、土地は面積や立地環境など個別事情に左右されやすく、専門家でも評価額が変わることがある。
 「土地評価の経験が豊富な一部の税理士に案件が集中するので、税理士でも相続税に精通する人は実は多くない」と伊藤さん。遺産に土地が多い場合は手数料の安さだけで選ばず、経験・実績をチェックした方が良さそうだ。インターネットで調べたり、相続案件をどれだけ手掛けたか実際に聞いてみたりするといい。
 相続は、遺産を巡り家族関係がこじれる場合もある。「兄弟姉妹は本当に困った時に、無償で助け合う大切な仲間。関係断絶で失うものは大きい。ゴールは節税だけでなく、円満かつ円滑な相続にあることをお忘れなく」と強調している。
<相続税の課税対象者> 2015年の法改正で、基礎控除額が「3000万円+(600万円×法定相続人数)」に縮小されて増加。18年の全国の課税対象者の割合は8・5%と改正前の約2倍に。都道府県別は多い順に、東京(16・7%)、愛知(14・3%)、神奈川(13・3%)となった。

◇困り事や体験談募集

 相続に関する困り事や体験談を募集します。メール=seikatut@tokyo-np.co.jp、ファクス03(3595)6931。件名に「どうする相続」と記入を。

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