獅子舞存続、地元だけでは… 過疎化進む奥多摩「都は対策を」

2020年7月3日 06時00分

「原の獅子舞」の獅子頭を前に「将来にも獅子舞を残したい」と話す松島敏明さん=東京都奥多摩町の水と緑のふれあい館で

 軽快な笛の音に合わせ、胴に太鼓をつけた金、黒、赤色の3匹の獅子が激しく舞う。東京都奥多摩町原地区の「原の獅子舞」は、毎年9月に町内の小河内神社に奉納される伝統芸能。400年以上前から続くとされ、小河内ダム(奥多摩湖)の建設で集落が水没して移転した後も、守り継いできた地区の誇りだ。 (林朋実)
 だが獅子の舞い手で地元に住むのは保存会長の松島敏明さん(56)だけ。笛方などを含む演者全体でも3、4人。町外の出身者や親類が加わり、高校生から70代までの約35人で保存会を維持している。地区内に小中学生はいない。松島さんは「昔のように地元だけで存続させることはできない。どうやって将来に伝えていくか」と模索する。
 都庁から西へ約70キロ、高層ビルが立ち並ぶ都心とは別世界の奥多摩町は9割以上を山林が占める。1955年に古里村、氷川町、小河内村の3町村が合併し、人口約1万5000人で誕生して以来、過疎化の道をたどり続ける。
 57年の小河内ダム完成による作業員の転出、基幹産業である林業の衰退などで、6月1日現在の人口は当時の約3分の1の5027人。15歳未満の年少者数の落ち込みは深刻で、60年に4752人だったのが、今は346人だ。高齢化率は50.1%に達する。
 町は若年層を呼び込み、人口流出を食い止めようと、さまざまな定住支援策を打つ。格安の町営若者住宅を用意し、15年以上住めば土地付き住宅が実質無償で手に入る「いなか暮らし支援住宅」を提供。小中学校の給食費の全額助成などの子育て支援にも力を入れる。
 こうした施策に豊かな自然の魅力が重なり、支援策を利用した転入者と町内転居者は計535人に上る。このうち15歳未満は170人。町の担当者は「実績は上がっている」と自負するが、定住支援だけでは根本的な過疎対策にならないことも認める。町内の死者数は年間100~200人なのに対し、出生数はこの10年、10数人で推移しており、人口減に歯止めはかかっていない。
 さまざまな支援策は町独自のメニュー。過疎に悩む他県では、全県を挙げてIターンやUターン推進に取り組む動きもある。担当者は「都外の自治体より交付金などの財政支援は手厚いが、都にも主体的な過疎対策を打ってもらえれば」と期待する。

奥多摩湖を望む高台に民家が建つ原地区=東京都奥多摩町で

 JR奥多摩駅から車で10分ほどの原地区を含め、隣接する4地区の自治会は今年4月、過疎化の影響で統合し「小河内自治会」になった。住民は109世帯で計191人。会長の清水栄司さん(72)は「若い人は町内に住むにしても、通勤や子どもの通学のため駅の近くを選ぶ。小河内は大半が高齢者世帯で、子どものいる家は数えるほどしかない」と話す。

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