経済優先で緊急宣言に慎重な政府、再発令の数値基準示さず 東京都も休業要請には後ろ向き
2020年7月3日 06時00分
東京都で新型コロナウイルスの新規感染者が2カ月ぶりに100人を超えた2日も、政府は緊急事態宣言の再発令など感染症の拡大抑止に向けた具体的な動きは見せなかった。経済の回復を最優先しているためだが、爆発的な感染拡大を抑え込むタイミングを逃す懸念がある。緊急事態宣言再発令の具体的な基準も示していない。(上野実輝彦、原昌志)
◆景気
「再び緊急事態宣言を発出する状況に該当するとは考えていない。医療体制も問題ない」。菅義偉官房長官は2日の記者会見でそう強調し、政府の対策本部も開かないと明言した。
休業や外出自粛の要請などに慎重なのは、経済活動を優先するためだ。政府高官は「経済を回し、これ以上の倒産や失業を生まないようにしなければならない」と明かす。
それほど経済的な打撃は大きい。日銀が発表した6月の企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業、非製造業ともに業況判断指数(DI)が2009年のリーマン・ショック直後以来の低水準。秋以降に感染第2波がくるとの見通しがある。政府はそれまでを「インターバル」(官邸幹部)と位置付け、景気回復にあてようとしている。
東京都も休業要請などには慎重だ。小池百合子知事は2日の記者会見で「経済社会活動と感染拡大防止の2本立て」を強調した。
小池氏は「休業要請のころ皆さんに我慢いただいた。あの状況に戻ることは誰にとっても好ましくない」として、都民への警戒呼び掛けにとどまった。都の休業要請は緊急事態宣言解除後もしばらく続き、都内経済団体から「限界だ」と悲鳴が上がった経緯がある。
◆最悪
経済優先で、どこまで感染拡大を受け入れるのか。政府は裁量の余地を残すため、緊急事態宣言再発令の数値基準を示していない。
政府の新型コロナ対処方針では「直近の報告数や倍加時間、感染経路不明な症例の割合などを踏まえ総合判断する」とあるのみだ。菅氏は「最悪の場合には再び宣言を出す可能性もある」としながらも、どんな状態なら「最悪」なのか説明しなかった。
◆政治
政府に提言してきた専門家会議のメンバーの1人は、新規感染者の増加をどこまで許容するか「根拠とデータを示さなければ国民は不安になる」とくぎを刺す。
その専門家会議も、政府は先月、廃止を決めた。首相周辺は「最終的に方針を決めるのは官邸だ」と語るが、野党からは「経済を動かすために(感染症)専門家の声や数字を軽んじてはならない」(安住淳・立憲民主党国対委員長)、「ファクト(事実)より政治が優先している」(原口一博・国民民主党国対委員長)との批判が上がっている。
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