プーチン氏、愛国を訴え「大勝利」も… 経済苦境、支持もイマイチ

2020年7月3日 06時00分

1日、モスクワ市内の投票所を訪れたプーチン・ロシア大統領=タス・共同

 ロシアで2日、憲法改正が成立し、プーチン大統領は2024年の任期切れ後の再出馬が可能となった。「領土割譲の禁止」など保守的な条文を前面に打ち出し、国民の愛国感情に訴える政権のキャンペーンが奏功した結果だ。だが新型コロナウイルスの感染拡大でロシア経済の苦境は深まる一方。欧米との対決姿勢を強める可能性もあり、国際社会の懸念も高まりそうだ。 (モスクワ・小柳悠志)

◆保守色全面に

 「大勝利だ」。ペスコフ大統領報道官は同日、約8割の賛成多数で承認されたことに喜びを示した。
 政権は200超の改憲項目のうち、政府系メディアを総動員して愛国心を喚起する条文をアピール。「隣国との国境画定を除き、領土割譲に向けた行為や呼び掛けは容認しない」とし、ソ連の第二次大戦勝利を念頭に「祖国防衛の偉業の矮小化を許さず」と訴えた。

◆領土割譲禁止は北方領土念頭

 プーチン氏は先月12日の演説で、北方領土が含まれる「クリール諸島」や、ウクライナから併合したクリミア半島など領土紛争となっている地域を「祖国」と明言。領土割譲禁止の条文が北方領土問題を念頭に置いているのは明白だ。
 北方四島を事実上管轄するサハリン州では領土条項が、住民のナショナリズムを喚起し賛成が91・9%に及んだ。リマレンコ知事は改憲により「ロシア国民は領土問題に最終的な終止符を打つことに貢献できる」と主張していた。
 改憲では国際法がロシア憲法と矛盾する場合、適用されないとの項目も盛り込まれた。欧州などにある国際人権裁判所が下した裁定をロシア政府が拒否する根拠になるため、人権団体などは強く憂慮。反プーチン派市民の活動を萎縮させる恐れもある。政治学者のオレシキン氏は「ロシア政府は真剣に耳を傾ける考えはない」と批判する。

◆続投賛成、反対ほぼ半々


1日、モスクワ中心部のプーシキン広場で、84歳になったプーチン氏の顔をイメージしたTシャツを着て抗議する男性=共同

 一方、プーチン氏への国民の信頼感も盤石とは言い難い。3月に独立系調査機関「レバダ・センター」が行った世論調査で、プーチン氏の続投を「望む」との回答は46%にとどまる一方、「望まない」が40%に達した。改憲成立はプーチン氏続投の白紙委任とは言えそうもない。政治学者のコレスニコフ氏は「投票方式には賛成票を増やす工夫が施され、プーチン続投という真の争点を巧みにぼかした」と指摘する。

◆コロナで貧富の差拡大

 ロシア中央銀行によると、原油価格低迷もあって今年の経済成長率はマイナス4~6%の見通しで、貧富の差も広がる。新型コロナウイルスによる不況で失業したモスクワのセルゲイさん(24)は反対票を投じた。「中央アジアの独裁国家じゃあるまいし、プーチン体制のさらなる長期化はごめんだ」と話した。経済低迷で国民の不満の矛先が政権に向かう可能性もあり、プーチン氏が24年に実際に出馬するかはなお不透明な情勢だ。

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