本でつながるシェアハウス 足立区 高齢化進んだ団地に新風

2020年7月3日 07時11分

リビングダイニングでくつろぐシェアハウスの入居者たち

 「読む団地」ー。本でつながる若者向けのシェアハウスが今春、足立区に誕生した。高齢化が進む昭和生まれの団地の一角に作られ、多様な世代が交流する地域の拠点として期待も高い。

「読む団地」の玄関

 先月初旬のある朝。フリーランスの美容師の女性(31)は表参道まで仕事に向かう前、共用エリアの「リビングダイニング」に寄った。昨夜作り置きした炊き込みご飯がこの日の朝食。集まってきた入居者と会話が弾む。

地域でのイベントにも使える「コミュニティラウンジ」

 4月に入居するまで米国に滞在していた。渡米前に美容師やヘアメーク、ネイリストと仕事を詰め込みすぎて忙しく、気分転換でニューヨークへ。友人と過ごした共同生活が楽しく「日本に帰ったらシェアハウスに住もう」と決めていた。

自身の本棚「マイブック図書館」を紹介する渡海諒さん

 リビングダイニングの本棚には約1000冊が並ぶ。女性は本好きで料理も得意。「食べつなぐレシピ」(按田優子著)という本を見つけると大根1本を使い切る料理にも挑戦した。部屋からサクラを楽しめる緑豊かな環境も気に入った。

居室前の廊下に設置されている入居者それぞれの本棚

 4月は新型コロナウイルスの影響で仕事が入らず、巣ごもりして自己啓発本やビジネス書を読みあさり、自分を見つめ直した。テレワーク中の入居者とも仲良くなった。「足立区とは縁がなかったけど、住みやすい」と満足そうだ。
 シェアハウスの正式名称は「『読む団地』ジェイヴェルデ大谷田」(足立区大谷田1の1)。都市再生機構(UR)大谷田1丁目団地7号棟の1階を区が所有し、日本総合住生活(JS、本社・千代田区)が運営する。1986年まで区は保育士の寮として使っていたが用途が定まらず、団地内の住民も高齢化。多世代が集う地域の拠点として活用しようと区が事業者を公募、若者向けシェアハウスを提案したJSが選定され、リノベーションした。
 共用エリアの至る所に本棚がある。リビングダイニングなどには実用書や小説、写真集、エッセーなど幅広いジャンルの本が並ぶ。戦争や貧困、フェミニズムなど社会問題からファッションや働き方など若い世代向けの本もそろっている。「『自分の本』と思える1冊と出合ってほしい」。そんな願いを込め、練馬区内で週末だけ開く書店「tsugubooks」(ツグブックス)がJSの委託を受けて選書した。
 入居者がお気に入りの本を並べた本棚「マイブック図書館」もある。営業の仕事をしている渡海諒(りょう)さん(26)は自分のキャラクターを演じながら物語を作っていく「テーブルトーク・ロールプレーイングゲーム」(TRPG)にはまり、自室前の「図書館」は関連本がずらり。「将来は団地内でTRPGの大会を開き、地域交流のきっかけに」と意気込む。
 入居者と地域の多世代の住民をつなぐ空間が「コミュニティラウンジ」だ。絵本に出てくる料理をつくる料理教室や、ブックマルシェ(古本市)など本にちなんだイベントも計画されている。企画にかかわる「つばめ舎建築設計」(新宿区)共同代表の永井雅子さんは「本は年齢を問わないコミュニケーションツール。地域に開かれたイベントを定期的に開きたい」と話す。
 大谷田1丁目団地自治会の吉沢勝一郎会長(78)は「高齢化が課題。団地のイベントなどで若い力を借りたい」と歓迎する。「若い力で盛り上げたい」と自治会加入を希望する入居者もいるという。
 デジタルの時代になぜ、本なのか。JS事業計画課の石垣曜子さんは「ブックシェアは貸し借りやお裾分けのようなご近所付き合いのきっかけになると考えた。本から始まるつながりを入居者同士だけではなく、団地や地域に広げていけたら」と期待する。

昭和に建てられた大規模団地の中の1階にある「読む団地」=いずれも足立区で

<「読む団地」> 昨年12月から募集を開始、男女計14人が入居している。28戸。原則18〜40歳が対象。個室は3タイプ(18〜35平方メートル)。1人部屋のAタイプ(18平方メートル)で、家賃5万4000円。共益費1万5000円。2人で入居できるタイプもある。スマートフォンなどで玄関や個室のドアを解除できる電子キーがあり、カギを持ち歩かなくてもいい。概要は「読む団地」で検索。問い合わせは、JS事業計画課=電03(5577)3673=へ。
 文・大沢令/写真・市川和宏
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